隠れ家に逃走手段など 香港デモの若者たちを支える市民の輪
逃走を助けるドライバーたち
27歳のチュンさんは、繰り返し抗議の現場となっている九龍半島の繁華街・尖沙咀のユースホステルで働いている。
勤務先のオーナーからは、抗議参加者は無料で泊める、警察による摘発を避けるため、ヘルメットやマスク、楯といった抗議ツールを保管してやる、といった指示があったとチュンさんは言う。
「香港市民は利己的だと思っていた」とチュンさんは言う。「でも今は、私たちは公共の利益に基づいて動いていると思える。私やあなたのためではなく、皆のためだ」
抗議の現場から参加者を安全に帰宅させることを目的とするオンラインのチャット・グループは多い。さまざまな社会階層のドライバーが、スマートな高級車であれ薄汚れたセダンであれ、抗議参加者を乗せて走っている。
そうしたグループの1つ、企業のウーバーとは何の関係もないのに「ウーバー・アンビュランス(救急車)」と名乗るグループは、登録メンバー3万2000人以上を数え、出動要請のときには隠語を使っている。抗議参加者は通常「生徒」、抗議活動は「学校」、使われる車は「スクールバス」、ドライバーは「父兄」、抗議ツールは「文房具」といった具合だ。
たとえば、「放課後、生徒を迎えに来られる父兄はいませんか」などと投稿する。
エリックさん(34歳)は、日中はお抱え運転手として働き、勤務時間後は抗議参加者を乗せているという。抗議の最前線に立つのは怖いが支援したい、とロイターに語った。
エリックさんがある晩、中心街での抗議を終えたティーン世代の少年たち3人を乗せて新界地区に向かったところ、彼らは夢中になって女の子の話を始めたという。
だが、気軽なおしゃべりは突然終わった。仲間の何人かが逮捕されたというメッセージが入ったからだ。
「彼らは抗議現場から脱出しようとしており、警察に追われていた。それでも、女の子たちについて話す余裕はあった」とエリックさんは言う。「何と言っても、彼らはまだ10代なのだ」。
「正直なところ、今後がどうなるか、とても不安だ。だが1つだけ確かなのは、抗議が行われるたびに私が車を走らせるということだ」。
(翻訳:エァクレーレン)
[香港 ロイター]
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