最新記事

事件

振り込め詐欺は中国相手が儲かる? インドネシア85人逮捕など東南アジア各国で拠点摘発

2019年11月28日(木)18時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

インドネシア警察が中国人振り込め詐欺グループの拠点を捜索、多くの「かけ子」が逮捕された KOMPASTV / YouTube

<中国の富裕層を餌食にした振り込め詐欺、投資やオンラインカジノなどの詐欺が東南アジア各国を拠点に行われていた──>

インドネシア警察当局は11月25日、首都ジャカルタなどでインターネットなどを使って中国本土の住民から金を騙し取るいわゆる振り込め詐欺の容疑で中国人85人を含む91人を逮捕したことを明らかにした。マレーシアでは10月26日に同様の容疑で中国人680人が逮捕されており、フィリピンでも9月から10月にかけて1000人以上の中国人が詐欺容疑で逮捕されていた。

東南アジア各国を舞台に振り込め詐欺などインターネットを利用した詐欺集団を統括する大規模なシンジケートの存在が指摘されており、各国の警察当局は摘発に力を入れている。

ジャカルタ警察などによると、首都圏などで中国人による大規模な振り込め詐欺に関する情報が中国治安当局から約2週間前に提供され、内偵捜査を進めた結果、23日から一斉摘発に乗り出したという。

その結果、ジャカルタや郊外のタンゲラン、東ジャワ州のマゲランなど6か所で中国人85人とインドネシア人6人の91人を詐欺容疑で逮捕した。インドネシア人6人は詐欺行為には直接関係しておらず、場所の提供など詐欺ほう助の疑いで取り調べているという。

観光ビザで入国、警察官らを装い犯行

これまでの取り調べによると、逮捕された中国人らはインターネット経由で中国本土にいる中国人に対し、税関職員や警察官あるいは銀行員を装って連絡し、捜査や調査を名目にして銀行口座などへの振り込みを求める詐欺を働いていたという。被害者はこれまでのところ全員が中国人で過去4カ月の推定被害総額は約2500万ドルという。

ジャカルタ警察によると、逮捕した中国人は全員が観光ビザ(30日間有効で、1回のみ延長可。最大で60日間滞在可能)でインドネシアに入国し、滞在期限が切れた場合は出国、新たな要員が交代することを繰り返していた。背後には大掛かりなシンジケートの存在が浮かび上がっている。

インドネシアでは2017年7月にも同様のインターネットを経由した振り込め詐欺などで約150人の中国人が逮捕されており、この時の被害総額は約4500万ドルだった。

インターネット環境が安価で利用できることや中国人が観光ビザで入国しやすいこと、さらに中国系インドネシア人も多く、周辺住民に外見だけでは怪しまれないことなどから、インドネシアが詐欺の海外拠点の一つに選ばれた可能性が高いと警察ではみている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中