最新記事

日本企業

ウイグル弾圧で生産された「新疆綿」を日の丸アパレルが使用?

Cotton and Corporate Responsibility

2019年11月26日(火)20時15分
キャサリン・パッツ

magw191126_Uyghur2.jpg

紡績機械が並ぶ工場いずれも新疆ウイグル自治区のアクス地区) DOMINIQUE PATTON-REUTERS

2016年12月にウズベキスタン大統領に就任したシャフカト・ミルジヨエフが取り組んできた改革で注目すべき側面の1つは、綿花産業の強制労働に焦点を当てる人権活動家と関わり始めたことだ。

11月1日、コットン・キャンペーンはプレスリリースで、ウズベキスタン政府との関わりがいい意味で深くなったと述べた。ウズベキスタン政府は今年、強制児童労働の根絶と強制成人労働の防止と処罰に関して成果を上げていることを訴え、企業の誓約とウズベキスタン綿のボイコットの解除を求めていた。

だが活動家たちは、ウズベキスタン政府による強制労働が完全になくなるまで運動を続ける構えだ。誓約で生まれた市場からの圧力は、かなりの効果を発揮している。

新疆がサプライチェーンに組み込まれていると、ウォール・ストリート・ジャーナルに名指しされた企業のうち、アディダス、H&M、GAP、ユニクロなどがコットン・キャンペーンの自主規制の「誓約」に署名している。この運動が対象としているのはウズベキスタン産の綿だけだが、根底にある「企業の社会的責任」という理念は、中国や新疆にも向けられるべきだろう。

しかし一口に強制労働と言っても、ウズベキスタンと新疆では実情がかなり異なる。

新疆での強制労働は、最も一般的な「人身売買による奴隷労働」とは別物だと、米戦略国際問題研究所が10月に発表した報告書にエイミー・レアーとマリーフェイ・ベクラキスは書いている。旧ソ連時代のウズベキスタンやトルクメニスタンのように、綿花の収穫期に農民や子供が強制的に駆り出されるケースとも異なるという。

「新疆では宗教的少数派に対する、より重大な迫害の一部として強制労働が行われている可能性がある」と、レアーは言う。新疆では「政府が関わる強制労働が綿花生産ばかりか紡績工場でも見られ、サプライチェーンの広範囲に影響が及んでいる」ともいう。

企業側に残された時間

レアーらは、企業の自主規制はウズベキスタン政府に対して有効でも、「新疆では困難だろう」と言う。農業生産がGDPの17.3%を占めるウズベキスタンで、綿は中核産業だ。一方、小売業者側からすれば、ウズベキスタンは仕入れ先の1つでしかない。

綿花の生産高は、中国のほうがはるかに大きい。米農務省が11月に発表した統計によれば、いま世界最大の綿の産出国はインドと推定され、全体の4分の1近くを占める。次が中国で、22%と肉薄している。ウズベキスタンのシェアは約2.4%にとどまる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中