最新記事

日本企業

ウイグル弾圧で生産された「新疆綿」を日の丸アパレルが使用?

Cotton and Corporate Responsibility

2019年11月26日(火)20時15分
キャサリン・パッツ

綿花の山からごみを取り除く労働者 DOMINIQUE PATTON-REUTERS

<MUJIとユニクロを含む世界の衣料大手が、強制労働のウイグル人が生産した綿を調達している疑惑が浮上>

日本の無印良品(MUJI)とユニクロが国際的な批判にさらされている。理由は、中国の新疆ウイグル自治区で綿を調達しているとされること。中国政府は新疆で、ウイグル人をはじめとするイスラム系少数民族を100万人以上強制収容しているとされる。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は5月、新疆ウイグル自治区を製品のサプライチェーンに組み込んでいる企業について報じた。さまざまな報告と証言によると、収容施設を出所したウイグル人などがこの地域の工場で強制的に働かされているという。

記事で名指しされた企業の中には、強制労働で綿花が生産されているウズベキスタンから綿花を調達しないという誓約書に署名している企業もあった。中央アジアのウズベキスタンと新疆では状況にいくらか違いはあるが、人権侵害をめぐる企業責任が問われていることに変わりはない。

10月にはNPOのウイグル人権プロジェクト(本部ワシントン)のニュリ・トゥルケル議長が、中国問題に関する米連邦議会・行政府委員会で証言。「東トルキスタン(ウイグル人は新疆ウイグル自治区をこう呼ぶ)で強制労働により商品が製造されている可能性を無視することはさらに難しくなっている」と述べた。

そして11月初めにはオーストラリアの公共放送ABCが、無印良品とユニクロが「新疆綿」の名を付けた製品を売り出して「波紋を呼んでいる」と報じた。無印良品は5月に「新疆綿」シリーズを発表。ユニクロは「高品質で知られる新疆綿を使用」という宣伝文句のシャツを販売している(現在は文言を削除)。

無印良品はABCの取材に対し、強制労働による製品には関与しないという社内基準を示し、今後さらに内部調査を行うと答えた。ユニクロは「新疆ウイグル自治区に直接の生産パートナーはいない」と答えている。どちらの企業も「新疆綿」を広告でうたいながら、強制労働のイメージから距離を置きたがっている。

ウズベキスタンには効果

綿は労働集約的な作物だ。欧米では機械化により綿花の収穫に変革が起こったが、今も綿花を手で摘む地域では強制労働が引き続き問題となっている。綿の加工も行う新疆では、生産のいくつもの段階で強制労働のリスクがある。

一方、ウズベキスタンは、綿花生産の強制労働を撲滅する運動の中心地になった。国際人権擁護団体コットン・キャンペーンの誓約には、300社以上が署名した。「ウズベキスタン政府が綿花産業における強制的な児童および成人労働に終止符を打つまで、製品のためにウズベキスタン産綿花を意図して調達しない」というものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日産、タイ従業員1000人を削減・配置転換 生産集

ビジネス

製造業PMI11月は49.0に低下、サービス業は2

ワールド

シンガポールGDP、第3四半期は前年比5.4%増に

ビジネス

中国百度、7─9月期の売上高3%減 広告収入振るわ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中