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中国は「祝賀御列の儀」をどう報道したか?

2019年11月12日(火)13時45分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

11月11日の朝9時のニュースでは、CCTVで再び動画で「日本、天皇即位祝賀パレードを挙行」というタイトルで放映された。

かつてなかった現象と言っていいだろう。

民間のネット情報やウェイボーのコメント

民間独自の情報としては「日本徳仁天皇即位パレード  詳細は全てここにあるよ」と、アクセスを誘うようなタイトルを付けているものなどもあり、注意を引いた。たしかにそこには写真が数多くあり、人目を惹く。

数え上げればキリがないが、中国版ツイッターであるウェイボーを覗いてみるのも、庶民の直接の反応を知ることができて悪くない。

これらはランダムに湧き出て来るのでまとめにくいが、割合にまとまっているサイトがあったので、ご紹介しておこう。

日本の報道を転載したものもあるが、東京の現場にいた中国人が自ら撮影したらしい独自のものもある。

アイドルグループの「嵐」が登場したことに強い関心を持ったらしい様子もうかがえる。

他の個別のコメントとしては「雅子さん、キレイ!」とか、「ずーっと手を振っていて疲れないだろうか」とか「日本って、こんなに天皇信仰が強いのか」などがあり、印象的だったのは「溥儀(ふぎ=清王朝最後の皇帝)は不幸だったよなぁ...」と清王朝を懐かしむような、悲哀を帯びたトーンのものがあったことだ。

もちろん反日的な書き込みもそれなりにあるにはあった。

しかし、総じて好意的であったと言えよう。

中国政府自身が、米中貿易戦争でアメリカから半導体などの輸出規制を受け、何としても日本を中国側に誘い込んでアメリカに対抗しようと戦略を練っていることもあるが、それ以外にも、4月4日付のコラム<「令和」に関して炎上する中国ネット>に書いたように、改元や天皇即位などとなると、中国の民は燃える傾向にある。

中国こそが「元祖だ」という気持ちが、複雑に自尊心や羨望を刺激している側面は否めない。

日本のアニメや漫画に刺激されて、日本の文化に興味を持っている若者たちの心を映し出すコメントとして「なぁんだ、着物じゃないのか。ガッカリ!これじゃイギリスと同じじゃないか......」というものがあったり、「いや、今、どんな時代だと思ってるんだい?なに、この古式蒼然(こしょくそうぜん)たる様は!」というものも見受けられる。この一見否定的に見える言葉の中に、少しも批判的なもの(悪意)が感ぜられず、むしろ屈折した自尊心と羨望が深く埋め込まれているように思われてしまうのである。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(11月9日出版、毎日新聞出版 )『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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