最新記事

アフリカ

国連制裁決議にも従わず......北朝鮮とウガンダのディープな関係

North Korea’s African Ally

2019年11月9日(土)13時15分
R・マクスウェル・ボーン(平和・民主主義・開発国際研究所〔IPDD〕バイスプレジデント)

ウガンダ軍は今なお訓練などで北朝鮮から多大な協力を得ている(2016年7月、南スーダン・ニムレ市にて撮影) REUTERS

<米トランプ政権の強力な圧力を受けてもアフリカの小国ウガンダが北朝鮮を「切らない」理由>

アフリカ中部の内陸国ウガンダが、宗主国イギリスから独立を果たしたのは1962年のこと。以来、いくつものクーデターとゲリラ活動、そして内戦に苦しんできた。

その1つから生まれたのが、独裁者イディ・アミンだ。1971年に軍事クーデターを起こして権力を握ったアミンは、「人食い大統領」と呼ばれるほどの恐怖政治を敷いた。ウガンダが北朝鮮と「出合った」のは、このアミンの独裁政権時代だった。

記録によると、ウガンダと北朝鮮の政府高官が初めて正式な会合を持ち、協力関係を結んだのは1972年4月。ウガンダ軍幹部の使節団が、平壌で開かれた軍事式典に出席したときだ。ここで北朝鮮とウガンダは3つの協定を結んだ。それぞれ軍事交流を進めること、ウガンダの北朝鮮からの武器購入について、そして北朝鮮がウガンダの軍事施設を建設する可能性を探ることが定められていた。

以後、アミンが失脚する1979年まで、北朝鮮とウガンダの関係は軍事援助を中心に深まっていった。それだけではない。アミン後に権力を握った大統領たちも皆、北朝鮮との協力関係を維持した。

ウガンダではアミンが亡命し、短命政権が続いた後、ミルトン・オボテが権力を掌握した。だがオボテは、1971年にアミンによって1度倒された人物だったため、国民抵抗軍をはじめとするゲリラ組織が直ちに反政府活動を開始。国内の治安は急激に悪化した。

困ったオボテは、1981年末に平壌を「親善訪問」して、北朝鮮に助けを求めたらしい。両国は新たに、教育、技術、文化、そして軍事をカバーする幅広い協力協定を結んだ。

だが、1986年1月にヨウェリ・ムセベニ率いる反政府勢力が首都カンパラを制圧。ムセベニは大統領就任演説で、オボテに忠誠を誓っていた国軍の兵士たちに軍にとどまるよう呼び掛けた。

その結果、オボテは国外に亡命したが、国軍はほぼそのままの態勢でムセベニの指揮下に入った。このとき、ムセベニは歴代政権の手に入れた北朝鮮製武器も管理下に置いた。これがきっかけとなり、ムセベニは北朝鮮軍高官をウガンダに招き、武器の使い方を教えてほしいと頼んだ。こうして1988年、北朝鮮はウガンダの警察に武術の訓練を施すとともに、海兵隊の育成を支援し始めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 8
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中