最新記事

アフリカ

国連制裁決議にも従わず......北朝鮮とウガンダのディープな関係

North Korea’s African Ally

2019年11月9日(土)13時15分
R・マクスウェル・ボーン(平和・民主主義・開発国際研究所〔IPDD〕バイスプレジデント)

当時はまだ冷戦中だったから、ウガンダと北朝鮮の協力関係を批判する声はなかった。なにしろ西側諸国も東側諸国も、アフリカ諸国に外交上あるいは軍事上の援助を行って、自陣営に引っ張り込もうと競い合っていたのだ。

だが、1989年にベルリンの壁が崩壊すると状況は一変する。多くの国はアフリカへの支援をやめた。だが、北朝鮮とウガンダの関係は違った。両国関係は深化し続け、ムセベニは1990年と92年に平壌を訪問し、北朝鮮建国の父・金日成(キム・イルソン)にも会っている。

その後、北朝鮮はウガンダの海兵隊育成と警察の訓練を続ける一方、両国は武器開発協力を拡大させていった。ウガンダが1990年代に入り、独自の武器開発・生産に力を入れるようになったからだ。

ウガンダ中部のナカソンゴラに今では悪名高い軍需工場ができたのは、こうした背景があったからだ。当初この工場では地雷や弾丸、小火器を製造していたが、やがて戦車など中規模の兵器の補修・建造を手掛けるまでに拡大した。

操業開始から数年後、中国と並んで北朝鮮の支援がこの工場の操業を支えていると現地のメディアが報じた。その証拠に近隣住民の話では、北朝鮮の労働者が工場に出入りしているという。

2000年代に入り、米政府が「グローバルな対テロ戦争」でウガンダと協力し始めると、北朝鮮の支援がさらに疑われるようになった。ウガンダは米政府と国連の査察官がナカソンゴラ工場に立ち入ることを拒否したのだ。2007年にようやく査察を受け入れたものの、ごく一部の工程を見せるにとどまった。

米政府は2004年からウガンダに対し、機密扱いになっている軍事関連予算の開示を求めた。そこから北朝鮮との防衛上の協力関係を示す情報を引き出せると考えたからだ。ところが2007年には開示請求を打ち切った。

なぜか。当時のジョージ・W・ブッシュ米大統領は北朝鮮の核の脅威も重視していたが、最優先に位置付けていたのは対テロ戦争だった。だから北朝鮮との関係が疑われても、アフリカ諸国の中でも際立って重要な対テロ戦争のパートナーであるウガンダを失うべきではないと考えたのだ。

2009年6月、国連安全保障理事会は北朝鮮の核実験を受けて、決議1874号を採択した。これにより北朝鮮は武器輸出を全面的に禁止されたが、採択後にウガンダと北朝鮮の軍事協力疑惑は解消するどころかむしろ拡大した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

東南アジアの洪水、死者241人に 救助・復旧活動急

ビジネス

独失業者数、11月は前月比1000人増 予想下回る

ビジネス

ユーロ圏の消費者インフレ期待、総じて安定 ECB調

ビジネス

アングル:日銀利上げ、織り込み進めば株価影響は限定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中