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GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

2019年11月14日(木)11時36分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

そんな細かいことと思われるかもしれないが、このような細かなところにこそ中国の真意が潜んでいて、見逃せない。

韓国がもし、中国側に付いてしまうとすれば、東アジアの大きな地殻変動が起きる。

ここまで韓国を持っていったのは、もちろん韓国自身ではあるが、その背中を押したのは日本だ。

文在寅政権になってから、慰安婦問題や徴用工問題などが日韓の間に横たわり、特に徴用工問題では、明らかに韓国が国際上の約束に反しているのだから、韓国が反省しなければならないし、また何らかの処罰を韓国が受けなければならないのは論を俟(ま)たない。

しかし、ストレートにその問題を追及すべきところ、日本は業を煮やしたのか、遂に今年7月に半導体三品目に関して輸出審査を厳しくし、またホワイト国から除外した。

ホワイト国とは、「大量破壊兵器などの拡散を防ぐための輸出管理体制が整っているとして信頼に足る国」で、そこから除外するということは「信頼できないから」であるはずだ。「大量破壊兵器などの拡散を防ぐための輸出管理体制が整っているとして信頼に足る国か否か」は即ち、「安全保障上、信頼できる国であるか否か」に掛かっている。

そこから除外したということは「安全保障上、信頼できない国と判断した」ことにつながる。

この論理構造は明快だが、日本は「次元が違う話」として位置づけている。

すなわち、安全保障上信頼できないからこそホワイト国から除外しているのに、安全保障上緊密な信頼関係にあるからこそ締結するGSOMIAには留まるべきだというのが日本政府の論理だ。

この二つは次元の異なる問題だそうな。

これではアメリカも困るだろう。

日本は初期行動を間違えてはしないか。

このままでは中国を利するのみだ。

そこにさらに中露蜜月としてのロシアが入ってくる。

この解明と分析は拙著『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』で詳述しているが、少なくともこのような状況下で、安倍首相は習近平国家主席を国賓として招くことなどやるべきでないのは確かだ。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』(11月9日出版、毎日新聞出版 )『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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