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GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

2019年11月14日(木)11時36分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

韓国が追い詰められている様子が、こういう「右往左往」からも読み取れる。

「在韓米軍駐留費5倍増を韓国が拒否」と中国は大きく報道

中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」やCCTVが、待ってましたとばかりに意気揚々と報道したのが、「アメリカが韓国に要求した在韓米軍駐留費の5倍増」を韓国が拒否したという事実だ。

11月8日付のCCTVは「47億米ドル!アメリカは韓国に天文学的"保護費"を要求、韓国拒否」というタイトルで、長々とアメリカの要求を韓国が拒否した事実を報道した。

第11回目の在韓米軍「防衛費分担特別協定(SMA)」協議の中で、ワシントンは「獅子大開口(ライオンが大口を開けて弱い者を飲み込むように、貪欲に、過度に大きい物質的要求を出すこと)」をして韓国にこれまでの負担金(8.61億米ドル)の5倍の金額を要求した。これは来年、日本やNATOに対して要求する金額の基準となるものだとCCTVは解説している。

またsohu.comは「十回に及ぶ交渉は失敗に終わった、アメリカは順番に圧力を掛けているが、それは中国に良い警鐘を鳴らしてくれた」という報道をしている。

それによれば、アメリカは韓国にGSOMIA放棄を撤回させ、また韓国がアジア太平洋戦略に参加するよう求め、ヨーロッパや日本などの他の国がアメリカに上納する」保護費」の標準を樹立しようとしているが、これは失敗に終わるだろうとのこと。

そして何よりも、中国がこの事態から学ぶべき教訓は「自国を守る軍事的整備は、自国が完結させなければならず、それができないと、このような哀れな"保護費"上納というようなことをしなければならない二等国、三等国へと成り下がる。だから中国はそうならないように軍備を万全にしなければならない」(概要)ということであると、自戒している。

中国に有利な東アジアの地殻変動を招いたのは誰か?

こうして中国は軍事強国への道をさらに強化し、そして韓国を自国側に惹きつけることに余念がない。

たとえば全く無関係のようなアセアン・サミットの報道においても、11月6日付の「人民日報」は「李克強第14回アセアン・サミットに出席」という見出しで、そこに出席したアセアン10ヵ国の指導者以外の国の指導者の名前を紹介しているが、その順序が興味深い。「韓国の文在寅大統領、ロシアのメドベージェフ首相、日本の安倍晋三首相・・・」というように、トップに韓国とその指導者の名前を持ってきて報道しているのである。

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