器官再生の仕組みの鍵は、ウーパールーパーが持っている
幼生の形態を保持したまま成熟する「ネオテニー(幼形成熟)」もその能力の要因か? Matthew Modoono/Northeastern University
<ウーパールーパーの再生能力の仕組みを解明し、ヒトの器官再生に応用しようとする研究がすすめられている......>
メキシコサンショウウオは「ウーパールーパー」の通称で知られる両生類の一種だ。幼生の形態を保持したまま成熟する「ネオテニー(幼形成熟)」がみとめられる生物のひとつでもある。
食料の乏しい環境では共食いすることもあるが、手足を食いちぎられても、数ヶ月のうちに、骨、筋肉、皮、神経がすべて備わった新しい手足が再生される。
このようなメキシコサンショウウオの高い再生能力の仕組みを解明し、ヒトの器官再生に応用しようとする研究がすすめられている。ヒトは再生能力が非常に限られており、成長が完了すると、新しい臓器を成長させるよう指示する遺伝子が休止する。
再生を促す合図の正体は......
米ノースイースタン大学のジェームズ・モナハン准教授の研究室では、「メキシコサンショウウオが損傷を受けると、傷口の周辺にある休止状態の細胞を活性化させ、損傷部の再生にあたるよう、何らかの合図がおくられるのではないか」との仮説のもと、その合図の正体を突き止めようと取り組んでいる。
研究室ではこれまでに、手足や肺、心臓の再生に不可欠な分子「ニューレグリン-1」を特定した。「ニューレグリン-1」を除去すると再生が停止し、これを加えると再生反応が促されたという。
再生反応が促されるメキシコサンショウウオのメカニズムを解明するのはたやすいことではない。メキシコサンショウウオは巨大で複雑な遺伝情報(ゲノム)を有しているためだ。
「ネオテニー(幼形成熟)」であることもその一因か?
独マックス・プランク研究所らの研究チームは、2018年2月、メキシコサンショウウオの全遺伝情報の解読に成功。ヒトゲノムが約30億塩基対であるのに対して、メキシコサンショウウオのゲノムはその10倍以上の約320億塩基対にのぼることが明らかとなっている。
メキシコサンショウウオのほか、ヒトデやミミズ、カエルなどでも器官を再生する機能が備わっているが、メキシコサンショウウオは、年齢にかかわらず、元の器官と同等に丈夫な器官を再生できる点で他の生物とは異なる。
メキシコサンショウウオは自然に変態することがなく、幼生の形態を残したまま生殖を行うことができる「ネオテニー」であることもその一因ではないかとみられている。