ラグビー場に旭日旗はいらない
DON’T SHOW THE FLAG
これまでのラグビーの歴史で、不毛な差別が全くなかったかといえば、そんなことはない。ラグビーが掲げる高い精神性とは矛盾する歴史も抱えてきた。日本が準々決勝で対戦した南アフリカの黒人たちにとって、白人しか選ばれない時代が長く続いた代表チーム「スプリングボクス」はアパルトヘイト(人種隔離政策)の象徴だった。
それを変えたのはネルソン・マンデラだ。差別と戦い、初の黒人大統領となった彼はスプリングボクスのジャージをまとい、95年のワールドカップ決勝に登場した。このときのスローガンは「ワンチーム・ワンカントリー」だった。それから24年──。今大会の南アフリカは、初の黒人主将シヤ・コリシが牽引する。貧しい環境に育ったコリシは、南アフリカの子供たちにとって自らが手本とならねばならないこと、その「責任をいつも忘れずにいる」(公式ガイドブック)と語っている。
楕円球には大英帝国による植民地支配や差別といった複雑な歴史が付いて回る。だが同時に、負の歴史を乗り越えようとしてきた事実も引き継がれている。ラグビーの精神も時代に合わせてアップデートされ、今があるのだ。先人たちがつないだパスは19年の日本に届き、代表チームは新しい歴史を切り開こうとしている。そんな時代に、現代の差別と結び付き得る旭日旗はラグビー会場にふさわしくない。
<本誌2019年10月29日号「躍進のラグビー」特集より>
【参考記事】日本が強くなったのはラグビーがグローバル化したからだ
※10月23日発売号は「躍進のラグビー」特集。世界が称賛した日本の大躍進が証明する、遅れてきた人気スポーツの歴史的転換点。グローバル化を迎えたラグビーの未来と課題、そして日本の快進撃の陰の立役者は――。