消費税率アップで日本経済は悪化するのか?
この軽減税率が人々の実質所得減少を恒久的に抑制するためのものとすれば、期限付きで行われるキャッシュレス決済のポイント還元やプレミアム付商品券は、駆け込み需要の反動減を抑制するためのものである。
高額なために税率引き上げの影響がとりわけ大きい自動車や住宅にも、さまざまな優遇措置が準備されている。これらの対策の結果、場合によっては増税以降に購入したほうが安くなるケースさえ生じている。今回は増税まで1カ月を切っても「駆け込み買い」が前回ほど見られなかったのは、おそらくそのためだろう。
損をしない消費のために
今回の増税のもう1つの特徴は、消費増税によって大きな負担を受ける子育て世代に対して、さまざまな還元措置が準備された点にある。1人につき最大2万5000円分の商品を2万円で購入できるプレミアム付商品券は、住民税非課税者と子育て世帯のみが購入可能だ。
さらに大きいのは、増税と同時に開始される保育料無償化(幼児教育無償化)だ。これによって、幼児1人当たり年間数十万円の負担が軽減される。世帯所得による差は出るものの、高等教育の無償化も実現される。それに対して、単身勤労者世帯や年金世帯が得られる恩恵は多くない。
今回の消費増税は、これまでとは大きく異なり、実質所得の減少や駆け込みの反動減による支出の急激な落ち込みを抑制するため、政府によりさまざまな対策が準備されている。個人の立場からは、煩雑ではあっても、それらをよく調べた上で、何をどこでどのタイミングで購入するのが最善かを、それぞれの商品ごとに検討する必要がある。
キャッシュレス決済のポイント還元は期限付きなので、購買はその期限内に行う必要がある。また、中小店舗へのシステム変更負担の軽減のため、5%の還元率が適用されるのは登録された中小店舗のみであり、コンビニ、外食などのフランチャイズチェーン、ガソリンスタンドでは還元率2%、大手スーパーや百貨店、現金支払いの店舗などでは還元なしとなっている。
つまり、損をしないためには「どこで買うのか」にも十分に注意する必要がある。
手厚い対策が講じられてはいても、増税後の消費の落ち込みは避けられないであろう。問題は、それが本格的な不況に転じはしないのかである。その点に関しては、基本的には政府の政策対応に頼る以外にはない。
そもそも第2次安倍政権は、デフレ脱却を最優先の政策目標に掲げてきた。政権の残りの期間中にデフレ脱却が宣言できるか否かは、政権の歴史的評価に関わる。もはや3党合意の縛りは存在しない以上、仮に今回の増税によってその実現が危うくなった場合、安倍政権はおそらく財政政策をフルに活用しようとするだろう。
<本誌2019年10月8日号:特集「消費増税からマネーを守る 経済超入門」から転載>
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