最新記事

中東

トランプの無為無策がイラン危機を深刻化させる

Trump’s Incoherence on Iran

2019年9月24日(火)19時50分
フレッド・カプラン(スレート誌コラムニスト)

magw190924_Iran2.jpg

イランの関与が疑われる攻撃を受けて炎上するサウジの石油施設 REUTERS

一見すると、イランがこんなリスクの高い行動に踏み切るのは奇妙に思えるかもしれない。サウジアラビアの以前からの求めに応じて、アメリカがイランへの報復攻撃に出れば、その結果は破滅的だろう。既にイランのみならず同国と取引する団体や個人をも対象とする米政権の経済制裁によって、イラン側は手持ちのカードを失っている。

しかし、だからこそイランはリスクの高い行動に出るとも言えそうだ。古い格言にあるとおり、手負いの獣は追い詰められたときに最も危険になる。イランは傷を負っているが、その軍事力に衰えはない。

加えて、最近のトランプの動きから、報復攻撃はないと踏んでいる可能性がある。イラン側の計算やリスクの大きさがどうであれ、優位を手にするにはイランは攻撃に出るしかないとも考えられる。

サウジアラビアとアメリカの側も、報復攻撃でイランにとどめを刺せるわけでないことは分かっている。世界の原油海上輸送量の5分の1が通過するホルムズ海峡の閉鎖をはじめ、イランには反撃の選択肢が多くある。

果たしてイランがそこまでやるかは分からない。だが今回の石油施設攻撃によって、イランはリスクを取る姿勢を示したのではないか。トランプもじきに、報復措置というリスクを取ることになるかもしれない。

アメリカとイランの対立が、これ以上、報復しても無駄だと敵に思わせる「エスカレーション・ドミナンス」のぶつかり合いになれば、思慮分別や自制は置き去りにされ、傲慢さや誤算が前面に出る。同じことは人類の歴史の暗黒面で何度も繰り返されてきた。

悪循環の罠を逃れる道は存在するが、トランプにもイランの指導者にもその意思や用意があるとは思えない。危機の根本的な要因は、サウジアラビアがイエメンに軍事介入し、内戦がホーシー派を支援するイランとの「代理戦争」になったこと、トランプが2015年のイラン核合意からの離脱を決めたことにある。

イエメン内戦に終止符を打つのは、トランプにとって難しくないはずだ。サウジアラビアへの武器売却を停止し、第三者的立場の中東諸国や国連に積極的な平和維持活動を行うよう働き掛ければいい。ところが、トランプは「最高の友人」であるサウジ王家を怒らせることは、何であれする気がない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮の金総書記、特殊作戦部隊の訓練視察 狙撃銃試

ビジネス

TikTok米事業売却計画保留、中国が難色 トラン

ワールド

アングル:ミャンマー大地震で中国が存在感、影薄い米

ビジネス

米国株式市場=ダウ2231ドル安、ナスダック弱気相
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 3
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 4
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 5
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 6
    大使館にも門前払いされ、一時は物乞いに...ロシア軍…
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    地球の自転で発電する方法が実証される──「究極のク…
  • 9
    4分の3が未知の「海の底」には何がある? NASAと仏…
  • 10
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中