最新記事

香港

香港最高裁・裁判官17人中15人が外国人──逃亡犯条例改正案最大の原因

2019年9月24日(火)16時15分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

五星紅旗の下の香港 Bobby Yip-REUTERS

香港の最高裁判所の裁判官のほとんどは外国人だ。従って「民主主義的価値観」に基づく判決が出される。このままでは「香港が民主化してしまう!」。北京政府の焦りが「逃亡犯条例改正案」の根本原因だ。香港デモの真相を解明する。

香港の親中党派の司法に対する不満

香港の最高裁判所の裁判官17人のうち15人が外国籍だなんて、そのようなこと、信じることはできないと思われる方たちのために、一つの具体例をお示ししよう。

2017年3月1日のBBCニュース「香港観察:法制の危機」は、2014年の雨傘運動の時のデモ参加者とそれを取り締った警官に対する判決があまりに不平等だと、親中派の香港の政党「建制派」が不満を述べていると報道している。

それによれば「警察を襲って公務執行妨害をしたデモ参加者には5週間の懲役」を、そして「暴力を振るったデモ参加者に対して、法を執行しようとして警察の公的権力(一定程度の暴力)を施行した警官側には2年間の懲役」という判決が出たそうだ。

すると、親中派の政党である建制派が、「先に暴力を振るったデモ参加者には軽い罰を与え、それに対応して法を執行した警官には重い罰を与えるのは不公平で、ダブルスタンダードだ」と激しい不満を表したのだという。

つまり、「裁判官は民主運動を叫ぶ者の側に立っている」という不満を親中派の政党は抱いているということになる。

もちろん、その不満は、中共中央および中国政府ではさらに強烈であることは想像に難くない。

2018年1月17日の中国政府の通信社「新華社」の電子版「新華網」が「香港の違法なオキュパイ・セントラルのデモ参加者16人に法廷侮辱罪」(オキュパイ・セントラル=雨傘運動)というタイトルで香港の司法への不満をにじませている。にじませるのであって、決して怒りを露わにしないということも肝心だ。憤りでは済まされない策をじっくり練っている。

怒りは他の民間ウェブサイトなどに書かせればいい。何と言っても、あれだけのデモを主導したリーダーの一人に与えられた罰は最大4か月半の懲役で、軽いのは1ヵ月なのだから。筆者もデモのリーダーたちが「ちょっとした旅行をしてきました」というような晴れやかな顔で出所する画像を、何とも複雑な思いで見たものだ。

このままでは香港が民主化してしまう!

結果、中国大陸のネットには「チャンチャラ可笑しい」といった類の嘲笑と不満が溢れた。「で、香港の未来はどうなるの?」というものもある。

そう──。

その「香港の未来」だ。

それが問題なのである。

このままいけば、香港が民主化してしまう!

北京政府が怖がらないはずがない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

フィンランドも対人地雷禁止条約離脱へ、ロシアの脅威

ワールド

米USTR、インドの貿易障壁に懸念 輸入要件「煩雑

ワールド

米議会上院の調査小委員会、メタの中国市場参入問題を

ワールド

米関税措置、WTO協定との整合性に懸念=外務省幹部
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中