中国とインドが月面探査の先に見る野望
To the Moon and Beyond
宇宙開発の重要な国であるロシアも2030年までに月を植民地化しようともくろんでいる。ロボット探査が成功した暁には、ロシア初の月面基地を月の両極に建設する構えだ。資源探査ミッションも計画中で、2020年代に無人月着陸船ルナ25を月の南極に向けて打ち上げる予定だ。
中国が宇宙開発において能力と存在感を増しているなか、インドと日本は2016年11月、宇宙開発協力に関する覚書に署名。その一環として、日本はインドのチャンドラヤーン3号のミッションに協力を予定している。時期は2022~2024年で、中国・ロシアとほぼ同じだ。アメリカも負けてはいない。
NASAのアルテミス計画では、24年までに初めて女性宇宙飛行士が月の南極に降り立つ予定だ。普段は宇宙での軍事力誇示を避けているインドだが、今年3月にASAT(対衛星攻撃)実験に成功して世界を驚かせた。
この「シャクティ作戦」では、高度300キロ軌道を周回する自国の人工衛星を弾道弾迎撃ミサイルで撃墜。発射から3分という早業だった。ミサイルはインド国防研究開発機構(DRDO)が開発したものだ。歴史的には宇宙における列強という印象を与えることに慎重なインドが、宇宙計画を利用して「スペースパワー」を誇示しだした。
宇宙軍事分野に詳しいブレント・ザイアニックによれば、スペースパワーとは「宇宙で、もしくは宇宙を通して、国家ができること全て」だ。ASAT実験はインドが宇宙で敵を撃墜する能力を見せつけた。DRDOは2012年にはそうした能力を獲得していながら、これまで公表を控えていた。
インドは重要インフラを中国に脅かされることを危惧し、中国による威圧に対する抑止力として報復能力を見せつけた。DRDOが宇宙開発に関与したのもISROが兵器の実験に加わったのも、これが初めてだった。さらに実験後、インドのナレンドラ・モディ首相はアジット・ドバル国家安全保障担当補佐官に宇宙ドクトリンの立案を指示。政府は6月、宇宙防衛機関(DSA)新設に関する概略をまとめた。
DSAの役目は「宇宙におけるインドの資産を守り、抑止力を持つため、広範なプラットフォームと衛星攻撃兵器を開発する」など、宇宙戦争の際にインドの利益を守る戦略を策定することだ。「宇宙利用の軍事面に関する」研究開発を行う防衛宇宙研究機構(DSRO)も新設される。
「資源争奪戦」への備えを2018年9月、中国国家航天局のシステム部門責任者だった李国平(リー・クオピン)は、中国は2030年までに月の両極にロボット探査機を送り込むと明言した。南極では太陽風が運んできた水素、炭素、ヘリウム、酸素の同位体構成を分析。北極では常に太陽光の届かないエリアに氷が存在するかどうかを探査する。