中国とインドが月面探査の先に見る野望
To the Moon and Beyond
アポロ時代の「国旗を立てて足跡を刻む」ミッションと違って、現代の優先課題は、月面の資源探査と長期的な移住計画だ。
中国・中央軍事委員会の軍備開発部副主任を務め、後に人民解放軍戦略支援部隊の要職に就いた張育林(チャン・ユィリン)は2016年にこう話している。
「地球と月の間の空間は、中国の力強い国家再生にとって戦略的に重要になる......中国が有人宇宙計画で目指すのは、いともたやすい月面着陸ではなく、難しい課題が残る火星へのミッションでもない。地球と月軌道の間の空間を、より先進的な技術で継続的に探査することだ」
空間技術研究院(CAST)で嫦娥4号の設計責任者を務めている孫沢洲(スン・ツォーチョウ)は次のように語っている。
「月面に科学研究基地を建設するためには、同じエリアに複数の探査機を着陸させて、複合施設を組み立てなければならない。そのためにはかなりの精度で着陸させる必要がある......嫦娥4号のミッションの課題を解決することによって、今後の月面探査と、ほかの惑星の着陸の基礎を築けるだろう」
中国にとって月面着陸は、さらに大きな目的を達成するための手段である。月面で工業能力を育て、小惑星の鉱物資源開発と、より遠い宇宙空間の探査と開発を実現しようというのだ。
例えば、ロケットの推進に用いる水など月の資源を使って宇宙船を建造・維持する技術によって、発射エネルギーを、地球から打ち上げる場合の22分の1に削減できる。
中国国家航天局(CNSA)は今年1月、嫦娥4号が月面軟着陸に成功した直後に、さらに数回の月面探査ミッションの計画があると発表。2036年までに、月面に恒久的な研究基地を建設すると述べた。
「中国の月面探査機の父」葉培建(イエ・ペイチエン)は2018年に、中国が先進的な月面探査技術の強みを生かして、月面の資源が豊富な土地の権利を主張しなければ、自分たちは今後何十年も後の世代から責められるだろうと指摘している。
人民解放軍の専門部隊
中国は、明確な宇宙戦略と壮大な野望を掲げているだけではない。月面基地の維持に必要な宇宙太陽光発電技術を積極的に開発するなど、月面で恒久的な研究基地を維持する能力があることも証明している。
習近平(シー・チンピン)国家主席は2015年12月、人民解放軍戦略支援部隊を設立した。人民解放軍の陸軍、海軍、空軍、ロケット軍と同列の独立部門で、宇宙戦争やサイバー戦争、電子戦争などを管轄するとみられ、習が宇宙で描く野望を推進することになる。