中国とインドが月面探査の先に見る野望
To the Moon and Beyond
宇宙で本格的な「領有権争い」が始まった? NASA
<次々に挑む月面探査ミッションは軍事利用、資源探査、そして移住計画への布石だ>
9月7日、インドの無人月面探査機「チャンドラヤーン2号」に搭載されていた着陸機「ビクラム」が、月面の上空約2.1キロまで近づいた。
着陸予定地点は、月の裏側に位置する南極の近く。南緯約70度にある2つのクレーター、マンチヌスCとシンペリウスNの間の高地だ。豊富な鉱物資源が存在すると考えられている月の南極付近で、地質などを調べる重要なミッションを担っていた。
チャンドラヤーン2号から切り離されたビクラムは少しずつ高度を下げ、軟着陸の態勢を整えた。しかし、いよいよ着陸という最後の段階で、バンガロールにあるインド宇宙開発研究所(ISRO)の管制室との交信が途絶えた。
チャンドラヤーン2号は現在も月の周回軌道上にあり、今後1年間、月の南極と北極の画像撮影や月面の観測などを続ける。ビクラムと探査車「プラギャン」が軟着陸に成功していれば、月面の昼1日(自転周期の違いから、昼1回、夜1回がそれぞれ地球上の約14日間に相当)をかけて、探査や撮影を行うはずだった。
今回のミッションは、打ち上げが技術的な問題で7月22日に延期されたものの、その後は計画どおり進んでいた。チャンドラヤーン2号は8月20日に月の周回軌道に乗り、最初に撮影した月面の写真も地上に届いている。
9月2日にはビクラムの切り離しにも成功した。インドが月面軟着陸に成功すれば、アメリカ、旧ソ連、中国に続いて4カ国目となり、宇宙大国の仲間入りをするはずだった。今年4月にはイスラエルの民間団体、スペースILが月面軟着陸に挑んだが、残り数分のところで通信が途絶え、探査機は月面に衝突したとみられる。
月面科学基地の本気度
これまで月の裏側に着陸したのは中国だけで、今年1月に無人探査機「嫦娥4号」が軟着陸に成功している(ただし、南極の近くではなかった)。
嫦娥4号から切り離された探査車「玉兎2号」は、過酷な月の夜を8回乗り越え、あまり知られていない月の裏側の観測を続けている。地球上の7月25日、月面の8日目(月の1日は地球上の約1カ月に相当)、玉兎2号は小さなクレーターでゲル状の見慣れない物質を発見したと報じられた。
今この時代に、月面探査計画が戦略的に重要な意味を持つ理由は何か。