日本の「有志連合」参加と改憲の微妙な関係
A Difficult Decision
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日の丸がホルムズ海峡に?(ジャカルタに寄港中の護衛艦) WILLY KURNIAWAN-REUTERS
<ホルムズ海峡の安全はエネルギー確保上の死活問題だが、トランプのイラン包囲網に加担できないジレンマも>
イラン沖のホルムズ海峡の航行の安全を確保するため、アメリカ主導の有志連合に参加すべきか否か。日本の政界でそんな議論が高まりだしたのは7月中旬。この時点ではまだ日本政府は、アメリカから参加要請があったと公式に認めていなかった。
8月7日、訪日中のマーク・エスパー米国防相が岩屋毅防衛相との会談で参加を要請。岩屋は原油の安定供給やアメリカとの同盟関係、イランとの友好的な関係などを踏まえ、総合的に判断したいと伝えた。
これまで日本はイランとおおむね良好な関係を保ってきた。日本のエネルギー需要がそれを支える大きな要因だった。
2015年7月にイランと米英仏独中口の6カ国が締結した核合意に日本は参加していないが、合意が切り開いた新たな機会を生かそうとイランに熱心な働き掛けをしてきた。同年10月には、当時の岸田文雄外相がイランを訪問。2国間の投資協定や、日本がイランの核合意履行を支援する方法について協議した。
ただ日本に限らず、どの国も単独で対イラン外交を展開するのは難しい。ドナルド・トランプ米大統領は昨年5月、核合意から離脱。イランに対する制裁措置を再発動し、同盟国にもイラン産原油の輸入禁止を求めた。日本、中国、韓国、台湾など8カ国・地域は特例的に全面禁輸措置を除外されていたが、今年5月にこの除外措置も打ち切られた。
トランプ政権にとってイラン封じ込めは重要な戦略的課題だ。そのためイラン、もしくはホルムズ海峡に関する日本の選択は事細かく精査され批判されるだろう。日本がアメリカの圧力に屈しなかった場合はトランプ政権から批判され、屈した場合は国内世論から非難される。
とはいえ、日本もイラン外交ではアメリカの指示待ちではなく、今も独自な働き掛けを続けている。イランのジャバド・ザリフ外相が8月末に訪日する予定で、ホルムズ海峡の安全確保はイランと周辺国の責務であるというイランの立場を安倍政権に説明するだろう。
世論は海自派遣に難色
イランと友好関係を保ちつつ、アメリカをなだめるにはどうすればいいのか。1つの可能性として、米主導の有志連合とは別に、海上自衛隊をホルムズ海峡周辺に派遣することが考えられる。あるいは紅海の出口に当たるバブエルバンデブ海峡に海自の艦船を送り込む手もある。こちらへの派遣なら、イランはさほど神経をとがらさないだろう。
読売新聞の報道によれば、海自が情報収集の名目で監視活動を行う艦船を派遣することは法的に可能だ。