太平洋諸国で存在感を強める中国 米国は「肉食獣の経済力」を懸念
米国と同盟国は太平洋地域で歴史的に主導的な立場を取ってきたが、中国も多くの国々と長期の関係を築いてきた。
サモアは1976年に中国を承認。歴史的に中国からの移民も多く、国勢調査によると、約20万人の住民の6分の1が中国人の血を引いている。
中国を強く支持するトゥイラエパ首相は昨年、太平洋諸国の債務問題はそれぞれの国の責任だと発言。中国の融資を批判するのは横柄だと表現した。
同首相はロイターに対し、地政学的な恐怖感によって、必要なインフラ開発が妨げられるのは認められないと述べ、サモアは、米国やその同盟国のものではない「独自の理屈に従う」と話した。
「彼らの敵は我々の敵ではない」──。
アピアの執務室で取材に応じたトゥイラエパ首相はこう述べ、「軍事的な話は何もしていない。我々が関心を持っているのは、必要な物資を運ぶ船や、われわれの海産物を輸出する漁船が寄港できる埠頭だけだ」と、強調した。
空っぽの港と滑走路
同じく太平洋の島国であるバヌアツでは、中国輸出入銀行の支援で進められたルーガンビルの港湾施設の改修と拡張工事が、西側諸国の関心を集めた。
このプロジェクトで、大型船舶が停泊できる全長360メートルの埠頭も整備された。だが、バヌアツの政府予算書類によると、施設が完成した2017年以降、ルーガンビルに寄港するクルーズ船は減少しており、収入が増えないまま債務が重荷となっている。
太平洋の島国では、バヌアツとサモアのほかにも、5カ国が中国に対して巨額の債務を抱えている。
やはり島国で、債務返済に行き詰ったスリランカは2017年、戦略的に重要なハンバントタ港の運営権を中国に譲り渡した。
ロイターは、サモアのサバイ―島にあるマオタとアサウの空港を訪れた。両空港とも使用されていないが、ジャングルが押し戻してくるのを防ぐために維持されている。
野党議員のオロ・フィティ・ヴァーイ氏は、これ以上重荷となるようなインフラを整備すれば、サモアは債権者の手に落ちると訴える。
「空港や埠頭は維持に多額のコストがかかる。稼げないインフラをこれ以上作れば、中国政府に返済できる当てがなくなる」
降ろされた旗
ロイターが太平洋諸国の財務状況を分析したところ、中国はこの10年で、こうした国々への無利子融資をほぼゼロの状態から同地域最大の債権者となるまで拡大させた。融資先のプロジェクトは港湾施設や空港、スタジアムや大きな通りの建設まで幅広い。
これに対し、オーストラリアは同地域最大の資金拠出国であり続けるために支援を拡大し、太平洋の同盟国の軍事訓練や支援に特化した新たな軍の部隊を創設すると表明した。
太平洋諸国では、中国の融資を受けて整備された施設に五星紅旗がはためく。今年初め、サモアではこの点に批判が集まった。
7月にサモアで行われた太平洋地域のスポーツの祭典、パシフィックゲームでは中国旗はほぼ撤去されていた。