第4弾対中関税制裁と為替操作国認定に対する中国の反応
中国の「新京報」は金融リスク管理関係の専門家・陳思進氏の分析を掲載しているが、陳氏は2ヵ月ほど前にも人民元は1ドル「6.5~7.5元」の間を動くだろうと予測していたとのこと。米中貿易摩擦の先行きがこれだけ不透明な中、変動幅10%程度で7.0になるのは全く正常な市場の変動内だと分析している。
中国問題グローバル研究所の研究員・孫啓明教授の意見
シンクタンク「中国問題グローバル研究所」の研究員の一人である北京郵電大学の孫啓明教授は、以下のように語った。
1.中国に対して「為替操作国」のレッテルを貼るということは、米財務省が自ら規定している「為替操作国」の条件を満たしておらず、アメリカの一国主義あるいは保護主義に基づく我が儘を表している。これは国際的な規則を破壊するだけでなく、全世界の金融経済に対して重大な影響をもたらすだろう。
2.中国は市場のニーズを基本にして通貨バスケットを参考にしながら調整し、管理フロート制(管理変動相場制)を実施している。「為替操作」ということは存在しない(筆者注:「為替操作」ということは存在しないということに関して、筆者が納得するか否かは別問題だ。ただ、孫教授はそのように言っているということを、ここに記すのみだ)。
3.米財務省は為替操作国として認定する基準を自ら設定している。2016年2月、米財務省は以下の3つの条件を全て満たした国を為替操作国と認定すると決めている。
第1:対米貿易黒字(財のみ、サービスを含まない)が200億ドル以上。
第2:経常収支黒字の対GDP比が3%以上。
第3:外国為替市場での持続的かつ一方的な介入が繰り返し実施され、過去12ヵ月間の介入総額がGDPの2%以上。
以上の3つだ。もし、ある経済体(国家)が上記3つの条件を全て満たしているなら「為替操作国」と認定し、2つの条件を満たしているなら「為替操作観察国」のリストに入れる。もし1つだけしか当てはまらない場合は、観察国に入れる場合もあるが、そうでない場合もある。このように米財務省は決めている。
この基準に従えば、中国は第1の条件だけは確かに満たしている。なぜなら貿易黒字が3233億ドルだからだ。200億を優に超えている。しかし、第2の条件に関しては、2018年の中国の経常収支黒字の対GDP比は0.37%なので、当てはまらない。また第3の条件に関しては、2016年下半期から今日に至るまで中国の外貨準備高は3兆ドル前後を安定的に保っているので、これも当てはまらない。したがって米財務省は自分が決めたルールに違反したことをやっているのである。
4.そもそも今年5月末の米財務省の報告書の中では、中国は「為替操作国」には入っていない。「中国、ドイツ、アイルランド、イタリア、日本、マレーシア、シンガポール、韓国、ベトナム」の8ヵ国が平等に「為替操作観察国」の中に入れられていただけだ。