グーグル対オラクル ソフト開発の未来を決める巨大テック企業同士の最終決戦
Google vs Oracle
1879年の判例が頼り
「アンドロイド以前は、JAVAコードを使いたい業者は例外なく使用ライセンスを取得していた。ブラックベリーもノキアもだ」。オラクル側は法廷に提出した文書でそう述べている。
もしアンドロイドがなければ、オラクルの持つJAVAがスマートフォンの標準OSになる可能性があった、とも主張している(JAVAを開発したのはサン・マイクロシステムズだが、同社は10年初頭にオラクルの傘下に入っている)。
また、オラクルが勝てばソフトウエア業界が壊滅するというグーグル側の主張も一蹴。14年5月と18年3月の控訴審判決でオラクルが勝っても異変は起きなかったと反論している。
意外なことだが、APIに関する訴訟の先例となる最高裁判決が下されたのは実に1879年だ。その判決で著作権の限界が定義され、著作権と特許権の違いが明らかにされた。
争われたのは、独自の簿記方式を開発したチャールズ・セルデンが、自身の著作に挿入した専用記入用紙の権利だ。これに酷似した記入用紙をW・C・M・ベーカーという人物が売り出したので、故セルデンの妻が著作権侵害でベーカーを訴えた。しかし、負けた。
最高裁の判決によれば、そもそも特許はアイデアを保護することができるが、著作権は特定の表現のみを保護する。この事案で言えば、保護されるのはセルデンが簿記の方法を説明するために使った文言だけということになる。つまり「著作権は著者に対し、著者が記した特定作業について、その実行方法に対する独占権を認めるものではない」ということだ。セルデン式簿記の実行方法に対する独占権がない以上、実行に必要な記入用紙の独占権もあり得ない。
後に、この判例は議会によって著作権法に書き加えられている。そこには、著作権は「いかなるアイデアや手順、プロセス、システム、実行方法にも及ばない」とある。
今どきの例で言えば、近藤麻理恵が書いた片付けに関する本の著作権は彼女に属するが、それを読んだ人が彼女流の片付けを実行しても著作権の侵害には当たらないということだ。
この解釈が、140年後のオラクル対グーグル訴訟でも主要な争点の1つとなる。ちなみにオラクルは当初、グーグルを特許権侵害でも訴えていたが、12年の一審で否定され、オラクルが控訴しなかったため、既に判決が確定している。
最高裁の審理では、APIとは何かを厳密に検討することになるだろう。基本的に、APIのコードには2つの要素がある。特定のタスクを実行するプログラム(実装コード)と、それを呼び出すためのデクラレーション(宣言)コードだ。