世界で最も有名なオオカミ「OR-7」を知っているか?
The Call of OR-7
保護活動家によれば、リーダーが殺されると群れは不安定になり、食料を求めてメンバーがより広い地域に分散し、結果的に家畜を襲う可能性が高まるという。しかし、オオカミが家畜を襲った事件は16年に24件だったが、17年には17件に減っている。
家畜の被害が減れば減るほど、オオカミが生き残る確率は高まる。例えばオレゴン州では州内を2つの地域に分け、それぞれに異なる個体数の回復目標を設定している。オオカミの個体数が増えるにつれて、保護の度合いは緩くなり、オオカミにとっては殺されるリスクが高まる。なにしろ州政府の保護政策に背を向けたオオカミ嫌いの人たちのモットーは「殺せ、埋めろ、秘密にしろ」なのだ。
一方、OR-7はオオカミ本来の暮らしを送っている。食べて、寝て、子を育てるだけだ。牧場主にとっては目の敵だが、保護活動家にはアイドルだ。
「今もOR-7の姿を見たくて、出合いそうな場所でハイキングやキャンプをしている」と語るベッキー・エルギンは『旅──歴史を作ったオレゴン・ウルフOR-7の驚くべき物語』という児童書の著者。「OR-7のおかげで、人々はオオカミが環境にどれほど重要であるかを認識し、オオカミが生息できるほど自然が残る地域に住むことがどんなに恵まれたことかを実感できる」のだと言う。
半年ほど前、オレゴンの野生生物学者スティーブ・ニエメラはジャクソン郡で道を走る1頭の動物を目撃した。OR-7だったと思いたいが、たぶんただの大型犬だろうと彼は言う。「あり得ないよな」。そのとき彼は仲間につぶやいた。「でもやっぱり、あいつだったと信じたい」
<本誌2019年1月1日、8日号掲載>
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