世界で最も有名なオオカミ「OR-7」を知っているか?
The Call of OR-7
牛の死亡例の95%は無関係
州内のオオカミ保護反対派はここ数年、陰謀論を広めている。オオカミの保護区を拡大するために、州政府がヘリコプターを使った秘密作戦で、オオカミを西に移動させたというのだ。
だがOR-7は、ハイイロオオカミが自力で長距離を移動できることを証明した。そしてカリフォルニア州は、この点に注目した。
OR-7が州境を越えた2年後、カリフォルニア州漁業狩猟委員会は州の絶滅危惧種法の下でオオカミを保護する決議を3対1で可決した。農業や牧畜関係者は反対したが、州政府に選択の余地はなかった。OR-7の絶対的な人気には勝てないからだ。
専門家の推定では、カリフォルニアに生息するオオカミは将来的に500頭くらいまで増える。現状の5倍だ。「OR-7はカリフォルニアを目覚めさせた。そう、ここにはオオカミがいる」と、スティーブンソンは言う。
しかし、オオカミを保護したくない州も多い。サウスダコタ州東部では「害獣」に分類されており、見つけたらその場で合法的に射殺できる。
アイダホ州は西部の玄関口であり、オオカミにとって重要な州だが、連邦政府によるオオカミ保護を州議会が取り消し、オオカミの狩りが一年中許可されている。同州のブッチ・オッター知事は推定770頭といわれるオオカミを150頭まで減らすと約束。オオカミを効果的に殺すために年間数十万ドルもの予算をつぎ込んでいる。
アイダホ州の漁業狩猟当局は、ヘリコプターからオオカミを狙撃する猟師を雇い、原生自然環境保全地域に罠も仕掛けた。表向きはエルクの数を増やすためとされるが、エルクの個体数は今でも目標値を超えている。
オオカミが牛を殺すケースは、牧場主が訴えるほど多くない。農務省の報告によれば、牛の死亡例の95%、羊の72%はオオカミと無関係だ。
家畜の主な死因は呼吸器疾患や感染症、脱水、飢餓、出産合併症または有毒な雑草の摂取など。肉食獣による被害は、ほとんどがコヨーテや飼い犬、ピューマ、ボブキャットの仕業だ。オオカミはたまに家畜を殺すが、その代償に命を失う。
16年3月にオレゴン州ワローワ郡でOR-4(OR-7の父)の率いる群れが家畜5頭を襲う事件が起き、群れのオオカミ4頭が射殺された。ワイスによれば、リーダーのOR-4は年老いて、もはや野生の動物を狩ることができなくなっていたという。