G7サミット最大の障害は「予測不能」なトランプ×ジョンソン
フランスが議長国となる主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)が、仏南西部ビアリッツで24─26日の日程で開催される。写真は2017年9月、ニューヨークの国連本部で握手するトランプ米大統領(右)と当時英外相のジョンソン氏(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)
フランスが議長国となる主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)が、仏南西部ビアリッツで24─26日に開かれる。貿易やイラン、地球温暖化などの問題を巡って既に各国が不協和音を奏でているが、気まぐれなトランプ米大統領に加え、同じく予測不能な行動で知られるジョンソン英首相が初めて出席するため、合意形成は一段と難しくなりそうだ。
昨年カナダで開かれたG7サミットではトランプ氏が首脳宣言への署名を拒否、会議を早退し、散々な結果に終わった。今回のホスト役、フランスのマクロン大統領はその二の舞を避けるため、予め目標を低く設定している。つまり、首脳間の結束を表明できる分野で少しでも事態を進展させる腹積もりだ。逆に意見が激しく対立している問題は、必要なら合意を見送ることに「合意」せざるを得ないだろう。
マクロン氏は「われわれはフォーマットを修正しなければならない。首脳宣言はなくなり、連帯やコミットメント、フォローアップ(が示される)。1つか2つのテーマは、G7のどこかの国が署名しないと想定する必要がある」と語った。
ビアリッツ・サミットは、格差問題の議論を深めるというのが中心的なテーマで、オーストラリアやブルキナファソ、チリ、エジプト、インド、セネガル、ルワンダ、南アフリカの首脳も招待している。
ただ厳しい議論が起きるのはそれ以外の話題になる。何しろ、米中貿易摩擦は、世界的な景気低迷の懸念を強めている。欧州主要国は米国とイランの対立を何とか和らげようと苦戦。トランプ氏はフランスが提唱するIT大手を対象とした世界的なデジタル課税に熱意がないし、温室効果ガスの排出抑制に関する欧州や世界全体の取り組みにも背を向けているのだ。
インドがジャム・カシミール州の自治権をはく奪してパキスタンとの緊張が高まっていることや、香港の大規模デモについても話し合われるかもしれない。
こうした中、日本政府のある高官は「貿易摩擦で世界経済に及ぼす恐れのある影響が協議されるのは間違いない。しかしコミュニケが発表されない以上、G7のメッセージを外部に発信するのは難しい」と述べた。
トランプ氏と欧州首脳などの関係がぎくしゃくしていることを踏まえ、いったん合意されていた問題であっても、今回は最低限の基準で着地点を探っていくとみられる。
先の日本政府高官は「それが米国か他の国かはともかく、だれかが受け入れようとしない話を強引に進めるのは建設的ではない」と付け加えた。
さらに固有の問題を抱える国も多い。イタリアは20日に首相が辞任したし、カナダは選挙モードに入っている。ドイツは退任を控えたメルケル首相の国際的な影響力が低下し、英国は欧州連合(EU)を離脱するか総選挙に突入するかを間もなく選ばなければならないだろう。