EU離脱目指すジョンソンに最大の障壁「バックストップ」とは何か
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バックストップは、英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの間に厳格な国境管理が導入されることを回避するための取り決め。写真はブレグジット(英国のEU離脱)反対派。1月26日、アイルランドのキャリックカーナンで撮影(2019年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)
英国が欧州連合(EU)から秩序ある離脱をできるかどうか、昨年11月に当時のメイ首相がEU側と合意したアイルランド国境管理を巡る「バックストップ(安全策)」条項が、最大の障害となっている。
ジョンソン新首相は就任後、EUと新たな離脱合意を結ぶにはバックストップ条項を撤回する必要があると語っている。
バックストップは、英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの間に厳格な国境管理が導入されることを回避するための取り決めで、代替的な管理体制が「見つけるまで」、もしくは「見つからなければ」、英国がEUの関税同盟にとどまるというものだ。
英国の議員の多くは、EUの規則と関税に縛られ続けることになるとしてバックストップに反対。英国は独自に他国と通商協定を結べない上、EU司法機関の監督下から抜け出せないと訴えている。
バックストップの要点と、この問題の論点をまとめた。
バックストップの狙い
アイルランド政府はバックストップについて、英国のEU離脱交渉がどう転ぶにせよ、英領北アイルランドとの500キロメートルに及ぶ国境の自由な往来を維持するための「保険」だと説明している。
アイルランドは、国境検査や国境を管理するためのインフラが整備されれば、1998年の北アイルランド和平合意が脅かされかねないため、バックストップは重要な国益だとしている。
英国が北アイルランドを統治し続けることを望む「ユニオニスト」と、アイルランドとの併合を望む「ナショナリスト」の30年間に及ぶ闘争では、3600人以上の死者が出た。国境の開放は、ナショナリストが抱く英統治への怒りを鎮めるのに一役買った。
EUと英国はともに、アイルランド国境に物理的なインフラを設けることは望まないと表明している。また双方とも、バックストップは発効しないのが望ましいとしているが、代替策の合意には至っていない。