最新記事

ビジネス

外食チェーンの海外進出、成功のカギは「8:2」の和魂洋才 くら寿司、全米展開の勝算

2019年8月3日(土)11時37分
南 龍太(ジャーナリスト)

何がアメリカに進出する飲食店の成否の明暗を分けるか、答えは各社各様だろうが、現地事情に照らしてローカライズ(現地化)するのは有効のようだ。逆に、うまくいかなかったケースについては、「日本式のサービスや料理、マーケティング方法をそのまま米国で用い、現地の米国人向けの宣伝活動を行わずに失敗している」と、日本貿易振興機構(ジェトロ)は指摘する(ジェトロニューヨーク事務所「平成30年度 米国における日本食レストラン動向調査」より抜粋)。いきなり!ステーキも、日本で成功したスタイルをそのまま持ち込もうとしたのが、失敗の一因だったと言えそうだ。

同調査はまた、日本食レストランが4000超と全米一多いカリフォルニア州ではその経営者の多くは日本人や日系人以外のアジア系であることや、比較的日本食が浸透していなかったテキサス州やフロリダ州などの南部でアメリカ人経営の日本食レストランが目立ち始めたことなども、特徴的な日本食事情として挙げている。

国外の成長市場、各社が取り込み

海外を目指す動きはくら寿司に限ったことではない。

スシローを展開する「スシローグローバルホールディングス」は2019年9月期~21年9月期の中期計画で、5カ国以上への進出、年間売上高200億円を掲げる。現在、韓国と台湾に店を出しており、8月には香港とシンガポールにそれぞれ1号店をオープンする。「すしが非常に浸透しており、単一国での市場規模も大」と期待する北米へも20年9月期以降に進出を目指すほか、欧州での展開もにらむ。

そのスシローとの経営統合が白紙に戻った元気寿司は、海外出店の実績で先行している。現行の中期計画の目標では、国内の200店を上回る海外250店と掲げている。実際、海外店舗は既に約200店に上る。マレーシア、カンボジア、ミャンマー、クウェートなど、競合他社が未開拓のフロンティアへと、果敢に店舗網を広げている。アメリカでは、現地法人を通じてハワイを中心にワシントン、カリフォルニアの3州に店舗を持つ。なお、スシローとの経営統合撤回の理由の1つは「アジア地域での店舗展開方式の違いが明確となった」ことだとしており、現在の回転ずし業界において海外戦略がそれだけ重要な要素になっていることがうかがえる。

業界3位のはま寿司は、親会社ゼンショーホールディングスの持つ販路や流通網を生かして海外展開し、現在上海や台湾に店舗がある。ゼンショーは、アメリカを中心にカナダとオーストラリアでテークアウトのすし店を展開するアドバンスド・フレッシュ・コンセプツ(AFC)を約290億円で傘下に収めるなど、攻勢を強めている。「AFCとシナジー効果を発揮し、さらなる業容拡大を期待できる」と判断した。

4位のかっぱ寿司は韓国に店舗がある。業績不振を受け、14年に外食チェーン大手のコロワイドの傘下に入ったが、直近2年は黒字決算を維持している。

sushi190801c.png

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

戒厳令騒動で「コリアディスカウント」一段と、韓国投

ビジネス

JAM、25年春闘で過去最大のベア要求へ 月額1万

ワールド

ウクライナ終戦へ領土割譲やNATO加盟断念、トラン

ビジネス

日経平均は小幅に3日続伸、小売関連が堅調 円安も支
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 5
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 7
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 8
    健康を保つための「食べ物」や「食べ方」はあります…
  • 9
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 10
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 7
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中