外食チェーンの海外進出、成功のカギは「8:2」の和魂洋才 くら寿司、全米展開の勝算
何がアメリカに進出する飲食店の成否の明暗を分けるか、答えは各社各様だろうが、現地事情に照らしてローカライズ(現地化)するのは有効のようだ。逆に、うまくいかなかったケースについては、「日本式のサービスや料理、マーケティング方法をそのまま米国で用い、現地の米国人向けの宣伝活動を行わずに失敗している」と、日本貿易振興機構(ジェトロ)は指摘する(ジェトロニューヨーク事務所「平成30年度 米国における日本食レストラン動向調査」より抜粋)。いきなり!ステーキも、日本で成功したスタイルをそのまま持ち込もうとしたのが、失敗の一因だったと言えそうだ。
同調査はまた、日本食レストランが4000超と全米一多いカリフォルニア州ではその経営者の多くは日本人や日系人以外のアジア系であることや、比較的日本食が浸透していなかったテキサス州やフロリダ州などの南部でアメリカ人経営の日本食レストランが目立ち始めたことなども、特徴的な日本食事情として挙げている。
国外の成長市場、各社が取り込み
海外を目指す動きはくら寿司に限ったことではない。
スシローを展開する「スシローグローバルホールディングス」は2019年9月期~21年9月期の中期計画で、5カ国以上への進出、年間売上高200億円を掲げる。現在、韓国と台湾に店を出しており、8月には香港とシンガポールにそれぞれ1号店をオープンする。「すしが非常に浸透しており、単一国での市場規模も大」と期待する北米へも20年9月期以降に進出を目指すほか、欧州での展開もにらむ。
そのスシローとの経営統合が白紙に戻った元気寿司は、海外出店の実績で先行している。現行の中期計画の目標では、国内の200店を上回る海外250店と掲げている。実際、海外店舗は既に約200店に上る。マレーシア、カンボジア、ミャンマー、クウェートなど、競合他社が未開拓のフロンティアへと、果敢に店舗網を広げている。アメリカでは、現地法人を通じてハワイを中心にワシントン、カリフォルニアの3州に店舗を持つ。なお、スシローとの経営統合撤回の理由の1つは「アジア地域での店舗展開方式の違いが明確となった」ことだとしており、現在の回転ずし業界において海外戦略がそれだけ重要な要素になっていることがうかがえる。
業界3位のはま寿司は、親会社ゼンショーホールディングスの持つ販路や流通網を生かして海外展開し、現在上海や台湾に店舗がある。ゼンショーは、アメリカを中心にカナダとオーストラリアでテークアウトのすし店を展開するアドバンスド・フレッシュ・コンセプツ(AFC)を約290億円で傘下に収めるなど、攻勢を強めている。「AFCとシナジー効果を発揮し、さらなる業容拡大を期待できる」と判断した。
4位のかっぱ寿司は韓国に店舗がある。業績不振を受け、14年に外食チェーン大手のコロワイドの傘下に入ったが、直近2年は黒字決算を維持している。