最新記事

イラン

有志連合の結成に「時間が必要」なのは、支持しているのは韓国ぐらいだから

U.S. Struggles to Get Europe's Help As Iran and Russia Plan Military Moves

2019年7月31日(水)18時30分
トム・オコナー

イラン沖でイギリスのタンカーのそばを航行するイラン革命防衛隊の船(19年7月21日) WANA/REUTER

<トランプ政権は英、仏、独にホルムズ海峡を通過する石油タンカー護衛の有志連合を呼びかけるが、手を挙げたのは韓国ぐらい。多くの同盟国が、強引なトランプの味方をしてイランを敵に回すのを恐れている>

イランとの緊張が高まるなか、アメリカはイギリスとフランス、ドイツに対して、ペルシャ湾周辺の戦略的海域を航行する民間船舶の安全確保を目的とする「有志連合」に加わるように正式に求めた。一方イランは最近、ロシアと緊密な軍事協力を行っている。

トランプ政権は「フランスとイギリスに加えてドイツにも、ホルムズ海峡の安全を確保し、イランの侵略と戦うことを正式に要請した」と、在ベルリン米大使館は7月30日に発表した。「ドイツ政府当局者は航行の自由は守られるべきだと明言している。そこで聞きたい。いったい誰が守るのか」

イギリス政府は既に、ホルムズ海峡の安全航行確保に向けた国際的な「海上保護派遣団」の結成を提案している。ホルムズ海峡は世界で最も重要な原油輸送の要衝だが、タンカー攻撃や無人偵察機の撃墜など不穏な事件が続いている。

フランス、ドイツは今のところ英米どちらの構想にも参加表明はしていない。ドイツ議会で軍の監察官を務めるハンスピーター・バーテルスは、「ドイツ海軍は法が許す範囲で活動している」と述べた。英米の構想に参加することは「他の同盟国に対する義務を疎かにすることになる」。

在ベルリン大使館はこれに対し、こうツイートした。「提案:欧州最大の経済大国なのだから、もっと船を増やせばいいだけでは?」

英仏独とも、イランと鋭く対立するアメリカの有志連合に参加してイランを敵に回したくないのが本音だ。

<参考記事>米イラン戦争が現実になる日

トランプは強硬姿勢を維持

イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国、EUは、2015年にオバマ政権がとりまとめたイランとの核合意に署名した。昨年、トランプが一方的に核合意を離脱したのちも、他の国は合意に留まり、支持し続けた。トランプと違い、イランの核開発を抑止するために合意が有効に機能してきたと考えたからだ。

アメリカはイラン産原油の輸入禁止などの制裁に参加するよう同盟国に強要したため、欧州各国は独自にイランとの貿易ルート確保を試みた。しかしイランは、アメリカの制裁に対する報復として、核合意で決まった上限を超えるウラン濃縮に踏み込んでしまった。

<参考記事>次の戦争では中・ロに勝てないと、米連邦機関が警告

中国とロシアはアメリカが悪いと非難する。ホルムズ海峡での石油タンカー攻撃についてアメリカがイランを非難したことや、米軍がこの海域でプレゼンスを拡大していることが、中東を戦争の危機にさらしているというのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中