ウソが真実を駆逐? フェイクニュースに対抗する「ファクトチェック」に限界
7月11日、欧州連合(EU)は米フェイスブックなどのソーシャルメディア(SNS)に対し、「フェイク(偽)ニュース」対策の強化を迫っている。写真はダブリンのフェイスブック社内に設置された選挙対策オペレーションセンター(2019年 ロイター/Lorraine O'Sullivan)
欧州連合(EU)は米フェイスブックなどのソーシャルメディア(SNS)に対し、「フェイク(偽)ニュース」対策の強化を迫っている。しかし新たな調査によると、ファクトチェック(事実検証)体制を強化しても、誤った情報がもっとも拡散したコミュニティーにはほとんど正しい情報は届かないことが明らかになった。
この調査はビッグデータを扱うアルト・データ・アナリティクスが、5月の欧州議会選挙を前に3カ月かけて分析したもの。ファクトチェックの需要が高まっているにも関わらず、その有効性には疑問符がつくという内容となっている。
ロシアが2016年の米大統領選に影響を与えるツールとして利用したことから、フェイスブックは激しい批判にさらされてきた。これを受け、同社は2018年にファクトチェックの人員を全世界で4倍に増やし、傘下の対話アプリ「ワッツアップ」にもファクトチェックのサービスを導入した。
EUは独自のファクトチェック部門を持つが、オンラインのSNSプラットフォームに対し、対策を強化しなければ規制を課すこともありうると警告した。
ファクトチェッカーは、多くの場合、自分で設立した非営利団体か主要なメディアで働くジャーナリストだ。彼らは根拠のない情報や加工された画像、違う印象を与えるように編集された動画などを反証する記事やブログ、ツイートなどを投稿する。
しかし、フェイクニュースと闘うにあたり、それらの反証がどれだけ効果的なのかという独立調査はほとんどなかった。
アルト・データ・アナリティクスは、EU内5カ国に拠点を置く20以上のファクトチェック団体を調査した。その結果、これらの団体のオンライン上のプレゼンス(存在感)が極めて低く、去年12月から今年3月までのデータでは、ツイッター上のリツイートやリプライ、メンションによる影響力は全体の0.1-0.3%だった。
同調査によって、これまでファクトチェッカーたちがうすうす感じていたことが明確になった。つまり、彼らが発信する情報が届いているのは、教えられる必要がない人たちなのだ。
調査の結果、ドイツ・フランス・スペイン・イタリア・ポーランドでジャンクニュースにもっとも接する可能性が高い層は、これらのファクトチェック団体の投稿を共有する人たちとほとんど接点がなかった。