ウソが真実を駆逐? フェイクニュースに対抗する「ファクトチェック」に限界
偏って広がる情報
欧州議会選挙では、極右が席数を増やしたものの、リベラルや環境政党も同様だったため、結局親EU派が議会運営に必要な勢力を維持した。
EUは、票を動かそうとする国をまたいでの大規模な活動は検出されなかったものの、より察知しづらい国内での意見操作に注意すべきだと警告した。
アルト・データ・アナリティクスは、1日に数十件の投稿をするような異常かつ活動過多なユーザーを分析し、どの政治コミュニティーが最も疑わしい投稿にさらされているかを予測した。
すると、わずか1%以下のユーザー(多くはポピュリスト政党や極右政党を支持していた)が、政治関連の投稿の10%を生産していることがわかった。
彼らはネットワークを反移民主義、反イスラム、そして反体制的メッセージであふれさせていた。この調査結果は、欧州議会選挙前に市民活動団体AVAAZや教育機関オックスフォード・インターネット・インスティテュートが行った調査結果の傾向とも合致する。
これらのメッセージを反証しようとするファクトチェッカーたちの努力が、影響を受けたコミュニティーに達することはほとんどなかった。
欧州議会選挙に向けての1か月間、ジャンクニュースがツイッターのトラフィックの21%を占めたポーランドでは、ファクトチェッカーたちが生産した情報は、主に与党「法と正義」に反対する人々の間で共有された。EU圏の主要言語7カ国語におけるこの割合の平均は4%だった。
約1年前に反体制主義政権が発足したイタリアや、極右政党ボックスが躍進しているスペインでも、ファクトチェッカーが発信した情報は極めて偏った広がり方を見せた。
イタリアで活動する7つのファクトチェック団体による投稿のリツイート、メンション、リプライの過半数(大半は移民に関する内容)は、中道左派の民主党に共感を覚えるユーザーたちによるものだった。
欧州議会選挙で第3位の勢力に躍進した、イタリアのサルビーニ副首相率いる右派政党「同盟」の支持者らに一定以上の足跡を残せた団体は、7つのうちわずか2つだった。
例を挙げると、イタリアのファクトチェッカー「オープンオンライン」の投稿には、民主党に好意的なユーザーから4594件のリツイート・メンション・リプライがあったのに対し、同盟に好意的なユーザーからはわずか387件の反応しか得られなかった。
主要メディア内に置かれていることが多いフランスのファクトチェック団体は、他よりよい結果を出していた。マクロン大統領についての嘘の情報などを反証する情報は、他国と比べ、多様なオンラインコミュニティーに満遍なく共有されていた。
ドイツでは、6つのファクトチェック団体のツイートに反応したのは、調査対象となったユーザーのわずか2.2%にとどまった。
アルト・データ・アナリティクスの調査には限界もある。オープンに手に入るツイッターのデータが、さまざまなプラットフォームにおけるオンライン上の会話の全体像を正確に反映するわけではないし、調査は5月の選挙とともに終了している。また、「偽情報」をどう定義するかという問題もある。
また、利用者の多いフェイスブックのデータも含まれていない。