「無差別殺人はなくならない」という常識に、戦いを挑む高校生たち
Fighting for Your Lives
――あの高校生たちは恐怖よりも「怒り」を抱いていた、と著書にはあるが。
彼らが行動を起こせた背景には、あの事件が何時間も続いたという事実がある。大半の乱射事件は発生から10〜15分で終わり、巻き込まれた人々は逃げることに必死で、怒りの感情が生まれる余裕はない。
しかしパークランドの高校生は、(銃撃が終わってからも)校内に閉じ込められていた。もはや「どうやって助かるか」の問題ではなかった。それよりも「どうしてこんなことになってしまったのか」と考える余裕があった。
あの晩、テレビでデービッドを見た私は衝撃を受けた。彼は「事件に遭ったばかりの被害者」のステレオタイプとは違っていた。
――著書では、生徒たちがNRAと戦おうと決意するまでの経緯にも触れている。
州都タラハシーへの旅は彼らにとって驚きの連続だった。旅の目的は、新たな乱射事件の被害者である自分たちが地元の政治家に面会し、銃規制の運動に弾みをつけることにあった。
でもタラハシーでジャッキーは気付いた。政治家は、目の前で少女が号泣しても動じない冷血なモンスターではなかった。ただし何かもっとずっと恐ろしいものが、政治家の行動を縛っていた。それがNRAの政治力に対する恐怖だ。
――『コロンバイン』には、銃撃犯を偶像化する高校生がけっこういるとの記述があるが。
今もそうだ。彼らは「コロンバイン・トゥルー・クライム・コミュニティー」を名乗り、今も活動している。
パークランドの銃撃事件の前、私は毎週30〜50人のこうした人々をソーシャルメディアでブロックしていた。彼らは大きな乱射事件があると1〜2週間は鳴りを潜めるが、やがて戻ってくる。でもパークランド後は戻ってこなかった。
――この国で将来、銃規制が実現する望みはあるか?
過去20年間、私はもっぱらアメリカで銃規制が不可能な理由を説明してきた。
だからフロリダに行って、私がずっと言い続けてきたことを「くだらない」と一蹴する若者に出会ったのは新鮮だった。それで思った。自分は降参するのを急ぎ過ぎたのかと。
その点こそ、彼らの運動が訴えていることだ。おまえたち大人はさっさと諦めた。くそ食らえ。邪魔するな。僕らにチャレンジさせろ、とね。
――銃の乱射をなくすにはどうしたらいいのか。
考えられる方法は3つある。まずは銃規制。2つ目はメディアが殺人者のイメージを低下させること──間違っても彼らのエゴを満足させ、彼らを英雄視するような機運を醸成してはならない。
そして3つ目は10代の若者の鬱病検査だ。年に1回か2回、ホームルームの時間に検査を行ってはどうだろうか。検査表は紙1枚で、「悲しくなる日は週に何日あるか」といった質問が10個ほどあればいい。これなら結果の集計も簡単で、どこの学校でもたいした費用をかけずに行えるはずだ。
これくらいは誰でもできる。私たちがコロンバインから学んだ教訓は、多くの場合、銃で人を襲うのは、自殺したくなるほど気分が落ち込んでいる者だという事実だ。
<本誌2019年2月26日号掲載>
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