「無差別殺人はなくならない」という常識に、戦いを挑む高校生たち
Fighting for Your Lives
――若者たちへの称賛の気持ちがよく伝わってくる。あの生徒たちは特別な存在なのか?
いろいろ考えてみた。優秀な子がたまたま集まっただけなのか? 確かに優秀だけれど、子供らしい純朴さもある。とにかく彼らには立ち上がる力が残されていた。大人の多くは始める前から諦めてしまうが、彼らはそうではなかった。引き下がらず、その場しのぎの答えを受け入れない。大人の中には目が覚めて、彼らに感謝する者もいるだろう。事件から24時間もたたないうちに、デービッド・ホッグは犯人よりも注目されていた。銃乱射事件がそんな展開を見せたのは初めてだ。
――コロンバインからパークランドまでの間に200件以上の同様の事件が起きた。パークランドに特に注目した理由は?
テレビで見たデービッドにクギ付けになった。私は事件翌日の生存者を20年間見てきたが、彼の反応は違っていた。私はすぐに電話し、簡単なインタビューをした。彼はスピーカーフォンにして仲間とも話させてくれた。するとジャッキー(・コリン)が「バスで(フロリダの州都)タラハシーに行く計画なの」と言う。「タラハシー? ワシントンじゃないんだ」と私。これからワシントンで行進すると聞いていたからだ。しかしタラハシーでも政治家に訴えるという。私は翌日、フロリダ行きの飛行機に飛び乗った。
この若者たちは突然、スポットライトを浴び、あれこれ詮索されるようになった。コロンバイン事件でもFBIは当初、若者2人だけの犯行ではなく共謀者がいると疑っていた。そして今回の場合は、「自分たちだけで(銃規制を求める)行動を思い付くわけがない。彼らを操っている黒幕は?」という声が出た。私にも「誰が裏で糸を引いているのか調べてほしい」というコメントが寄せられた。
――彼らの特徴は?
カメラに慣れていることだ。スナップチャットやインスタグラムを使いこなして、子供時代からコンテンツを作ってアップしている。
――コロンバイン事件はソーシャルメディアが存在しない時代に起きた。パークランドではどんな役割を果たした?
銃撃中、生徒は携帯電話で友達と情報交換していた。今の子供は短時間で多数の相手とメッセージをやりとりし、チャットする。そして事件が終わって帰宅するとソーシャルメディアだ。この違いは大きかった。ソーシャルメディアは思いがけない役割をした。生徒たちの「私たちは何をすればいいのか?」という気持ちを一つにして、行動に移させたのだ。
過去の例では事件について語り合うのは2〜3人のグループだった。今では何百人とつながり、リツイートするから同じ思いが拡散する。事件の晩、彼らはある考えを共有しながら眠りに就いた。なぜ同じ事件が繰り返されるのか、なぜ大人は手を打たないのか、と。