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「れいわ新選組」報道を妨げる「数量公平」という呪縛──公正か、忖度はあるのか

2019年7月19日(金)19時00分
小暮聡子(本誌記者)

――テレビと新聞を分けて聞きたいのだが、テレビが気にしているのは公職選挙法なのか、放送法なのか。

両方だ。しかし最近は、放送法を気にしている可能性があるかもしれない。放送法4条に違反すると、近年、総務省が放送局の所轄官庁として行う「行政指導」が行われる実態があるからだ。かつては政府も、放送法は倫理的な規範に過ぎないとしていたのが、最近は、行政処分の根拠になりうるし、しかもその違法判断は政府が行うと、法解釈を180度変更してしまっている。こうした状況がある中で、免許事業の放送局はどうしても総務省の顔色を気にせざるを得ない。本当は、政府の解釈が誤っているとして、きちんと白黒をつける必要があるのだが。

――2014年末の衆議院選挙に際し、自民党がNHKおよび民放各社に「選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い」と題した書面を出したことが話題になった。行政指導を気にしているというのは、NHKと民放の両方に言えることか。

言えるだろう。多くの放送局では、選挙期間になると責任者名で、扱いに注意しましょうといった内容のお触書が回る実態がある、と聞く。

――テレビ局の方たちと話すなかで、現場がどんどん「忖度」するようになっているという空気を感じるか。

選挙だから特に気にする、ということはないと思う。私が出演した番組で特別にそんなことを気にしていたとは全く思わない。それは思わないのだが、全体的に見ると放送局が息苦しくなっているというところはあると思う。息苦しさというのは、官邸を気にしているとか、行政指導を気にしているというよりも、文句がつくと面倒だ、ということだろう。

――文句というのは、政府から文句がつくということか。

政府はあまりないかもしれないが、自民党かもしれないし企業かもしれないし、視聴者・聴取者かもしれない。視聴者がある面では一番「面倒」かもしれない。メールや電話でクレームがくると、対応しなければならない。私の感覚では、ただでさえ人が少なくて忙しいなかそういうクレームを避けたいと考えているように思う。それよりも、本当に戦わなければいけないところで戦いましょう、と。

――テレビには、報道番組とワイドショーがある。選挙報道において2つですみわけはあるのか。ワイドショーであれば泡沫候補でも取り上げるが、報道番組では公平性に配慮する、など。

あると思う。報道番組と銘打っているところのほうが、より意識しているとは思う。外形的な公平さを守ろうという意識は、公職選挙法に基づいて報じようということだ。どこかに忖度しているというよりも、それが正しいと思っている、ということだろう。

文句うんぬんの話というより、メディアとしてのありようの話だ。これは今に始まったことではなく、日本のメディアは公平さが大事だと思っている。とりわけ選挙のときには党派性を帯びない、どこかの政党にくみしないという思いが強いため、できるだけ平等にやるのがいいことだと思っている。

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