最新記事

歴史問題

混迷する日韓関係、河野外相が徴用工問題で韓国大使呼び抗議 韓国は仲裁委の設置拒否

2019年7月19日(金)18時35分

河野太郎外相は駐日韓国大使を外務省に呼び、徴用工問題で直ちに具体的な措置を取るよう改めて求めた。席上、河野外相は韓国大使の発言を遮る形で反論、このことが韓国内では「非礼だ」と大きく取り上げられている。JTBC news/YouTube

韓国政府は19日、日本企業に賠償を命じた元徴用工訴訟を巡り、日本政府が要請していた仲裁委員会の設置を拒否した。河野太郎外相はこの日、南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使を外務省に呼び、国際法違反の状態を放置せず、直ちに具体的な措置を取るよう、韓国側に改めて求めていた。

河野外相は、韓国政府が元徴用工訴訟の判決について直ちに是正措置を講じるべきだとし、韓国政府が行っていることは、第2次世界大戦後の世界秩序を覆すことに等しいと発言。

南氏は、韓国政府は訴訟の両当事者が納得ができ、両国関係を損なわない環境づくりのため日々努力しており、日本側には韓国側の構想を伝えたと主張したが、河野氏は南氏の発言を遮り、韓国側の提案は全く受け入れられず、国際法違反の状況を是正するものではないと反論。知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼だと主張した。

日本政府は先月、日韓が共同基金を設立して元徴用工らに慰謝料を支払う韓国の提案を拒否している。

韓国大統領府の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安全保障室第2次長は19日、外交努力が尽くされていない中、日本が一方的に対韓輸出規制を強化することは、世界貿易機関(WTO)の自由貿易の原則と国際法に違反しているとの認識を示した。

金氏は、日本政府が要請していた仲裁委員会の設置は対立の解消にはつながらず、今後の関係を悪化させるだけだと述べた。

一方、韓国産業通商資源省は、日本による韓国向けの輸出規制強化に関する再協議を24日までに開催するよう日本側に求めた。

同省の李浩鉉(イ・ホヒョン)貿易政策官は、日本政府が貿易規制上の優遇措置対象である「ホワイト国」リストから韓国を外す計画について、「明確な証拠と事実」に基づく措置であるべきだと強調。このような動きが両国経済だけでなく世界的なサプライチェーンに重大な影響を及ぼすとの大きな懸念がある」と指摘した。

ソウルでは19日早朝、在韓日本大使館の前で乗用車が炎上し、乗っていた78歳の男が病院に運ばれた。テレビ報道によると、男の義父は戦時中の強制労働の犠牲者で、日本の輸出規制に抗議したとみられている。警察と消防当局は、調査中として動機についてコメントを控えている。

消防当局によると、その後、男は死亡した。

サムスン電子は、国内の取引先企業に書簡を送り、日本が韓国向け輸出規制を拡大する可能性に備え、日本製部品の在庫を増やしておくよう求めた。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は18日、主要5政党の指導者らと会談し、日本による半導体材料の輸出規制強化などを協議し、問題解決に向け協調して取り組むことを確認した。

また安全保障問題の顧問は、議員との会合で、日本との対立がさらに悪化した場合、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を見直すこともあり得るとの考えを示した。

*内容を追加しました。

[東京/ソウル 19日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中