核合意「違反」論争でイランの言い分が正しい理由
Iran Is Right
第4に、二次的制裁は核合意の精神に反するし、おそらく国際法に反する。イラン核合意は、15年7月にアメリカなど6カ国とイランが締結した6日後、安保理決議2231号によって承認されたことにより、締約国だけでなく国連加盟国全体に影響を及ぼす国際法となった。
つまりトランプ政権の二次的制裁は、アメリカの経済力(特に国際金融におけるドルの優位)を利用して、同盟国に国際法違反を強いているのに等しい。
第5に、イランの合意違反を国家安全保障上の脅威だと主張することによって、トランプ政権は皮肉にも、核合意への調印(とその遵守)が、アメリカの国家安全保障にとってプラスになると認めたことになる。
他方、トランプは核合意を「史上最悪のディール」とこき下ろしてきた。もし本気でそう言っているのなら、イランがそれを遵守していないことを問題視するのはおかしな話だ。史上最悪のディールを遵守すれば、史上最悪の事態になりかねないはずではないか。
トランプの元国家安全保障チーム(ジェームズ・マティス前国防長官、レックス・ティラーソン前国務長官、そしてH.R.マクマスター前国家安全保障担当大統領補佐官)は、総合的に見て核合意はアメリカの安全保障にとってプラスになるから、維持するべきだとトランプに進言した。イランに大きな不信感を抱くイスラエルなど、アメリカの同盟国の首脳や軍と情報関係者も同じ考えだった。
第6に、確かにイランはこの2週間、核合意の条件に反する措置を取ってきたが、それが直ちにイランを核爆弾製造に大きく近づけるものではない。
核合意は、イランが行えるウラン濃縮レベルを3.67%に制限している。これに対して「兵器級」ウランの濃度は90%以上と定義される。現時点では、イランがウラン濃縮レベルを20%に引き上げるのにも、まだ長い時間がかかるだろう。
イランが核爆弾を製造するのに必要な量の核燃料を確保するのも、時間がかかる。イランは核合意締結時に、低濃縮ウランの98%をロシアに移送し、ウラン濃縮用の遠心分離機の3分の2を解体し、西部アラクの重水炉をセメントで固めてしまったからだ。
イラン側の見込み違いも
つまり、イランに再び核合意を遵守させる時間はある。ただしそのためには、アメリカも核合意に復帰し、その条件を遵守する必要がある。
だが、現在のアメリカとイランは危険なゲームをしている。トランプは「最大限の圧力」をかければ、「よりよいディール」を結ぶための交渉にイランを引っ張り出せると思ったようだ。しかしこの作戦は、かえってイランの態度を硬化させた。トランプの現在の安全保障チーム、とりわけマイク・ポンペオ国務長官とジョン・ボルトン国家安全保障担当大統領補佐官が、実は新しいディールではなく、イランの体制転換を実現したがっているせいもあるだろう。