最新記事

経済成長

インドは脱貧困の優等生 10年で2億7000万人が極貧にさよなら

India Lifted 271 Million Out of Extreme Poverty in 10 Years: UN Report

2019年7月17日(水)18時00分
ジェイコブ・ウォレス

インドのアフマダーバードで電気オートバイに乗るカップル(2018年12月30日)Amit Dave-REUTERS

<国連の報告書で、インド人の暮らしが底辺から大きく改善していることが明らかになった>

国連の新たな報告書により、インドでは「極度の貧困」から脱した国民が大幅に増えたことが明らかになった。「多次元貧困」状態にあるとされた人々がインドの人口全体に占める割合は、2006年から2016年の10年間に、55.1%から27.9%にまで急落したという。

多元的貧困とは、所得だけではなく、健康状態、教育、暴力の脅威など複数の項目で貧困の実態を把握する指標。全世界で見ると、子どもでは3人に1人、大人の6人に1人が、この多元的貧困状態にある。

国連開発計画(UNDP)とオックスフォード貧困・人間開発イニシアティブ(OPHI)がまとめた2019年グローバル多元的貧困指数(MPI)は世界101カ国を調査対象とし、2006年から2016年の10年間について、「極度の貧困」レベルの変化を追ったものだ。

この報告によると、2016年までの10年間に、インドでは約2億7100万人の国民が貧困から脱した。MPIの調査対象国々のなかで最多の数字だ。特に「資産、食用油、衛生、栄養」といった項目で著しい改善が認められた。

<参考記事>異例の熱波と水不足が続くインドで、女性が水を飲まない理由が悲しすぎる

全世界で見ると、多元的貧困状態にある人は約13億人を数える。その大半は、バングラデシュ、カンボジア、コンゴ民主共和国、エチオピア、ハイチ、インド、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、ベトナムの10カ国に住んでいる。

インドでは、電力がない人の割合も9.1%から8.6%まで低下した。住環境が劣悪な人の割合も、44.9%から23.6%へと大きく下落した。

生まれで大きな差がつく人生

インドで特に大きな改善がみられたのは、国内でも最も貧しい地域だ。たとえばジャールカンド州では、多元的貧困層が占める割合は2005~2006年度の74.9%から、2015~2016年度の46.5%まで下落した。

<参考記事>インドの不平等の特殊さを描くドキュメンタリー『人間機械』

国連で2015年に採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、目標の1つに「世界中に住むあらゆる人の極度の貧困を根絶する」ことを掲げる。UNDPのペドロ・コンセイソン人間開発報告書室長は、より平等な世界を作るためにはさらなる取り組みが必要と語る。

コンセイソンは3月、「一部には改善が見られるものの、今日の世界にはいまだに根深い不平等がはびこっている」と指摘した。「貧しい国や貧しい家庭に生まれた新生児を待ち受ける人生は、豊かな環境に生まれ育つ子どもたちとは根本的に異なってしまう」

(翻訳:ガリレオ)

20190723issue_cover-200.jpg
※7月23日号(7月17日発売)は、「日本人が知るべきMMT」特集。世界が熱狂し、日本をモデルとする現代貨幣理論(MMT)。景気刺激のためどれだけ借金しても「通貨を発行できる国家は破綻しない」は本当か。世界経済の先行きが不安視されるなかで、景気を冷やしかねない消費増税を10月に控えた日本で今、注目の高まるMMTを徹底解説します。

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 7
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 8
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 9
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 10
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中