「今こそ賃金格差をなくそう」、ラピノー選手の優勝スピーチが聴衆を巻き込んだ
表彰セレモニーでのミーガン・ラピノー選手 Vincent Carchietta-USA TODAY Sports-REUTERS
<FIFA女子ワールドカップで優勝したアメリカチームの祝賀パレードで、ラピノー選手が行ったスピーチが話題だ>
2019年FIFA女子ワールドカップで、アメリカがオランダを2対0で破り、2大会連続4度目の優勝を果たした。
選手らは翌日ニューアーク空港(ニュージャージー州)経由で帰国の途に就き、10日午前9時30分からニューヨーク市庁舎前で表彰セレモニーと優勝パレードを行った。
パレードを見に来た群衆の中には、「こんな機会はめったにないから学校を休ませ、この子の記憶に一生残るようなものを見せたい」と、子づれで参加している人も多数見受けられた。
選手はこの日、スーツ着用の堅苦しい記者会見...ではなく、「世界チャンピオン」と書かれたラフなTシャツを着て、表彰セレモニーの壇上に現れた。感極まって踊りだしたり、クイーンの『We Are The Champions』を大合唱したり、シャンパン片手にフロート(パレードの台車)に乗り込んだり...。
US women's soccer star Megan Rapinoe just danced out on stage to "All I Do Is Win," joining the rest of the team for a ceremony in New York City to celebrate their World Cup championship https://t.co/zzXBncsI44 pic.twitter.com/N5nbnhchDQ
— CNN (@CNN) 2019年7月10日
これらの様子を眺めながら、筆者は少し前にインタビューしたニューヨークで働く寿司職人が「アメリカというところはエンターテインメントの国だと(寿司カウンター越しでさえ)ひしひしと感じる」とコメントしたのを改めて思い出したのだった。
エンタメとは、なにも派手でエキサイティングなコンサートやブロードウェイミュージカル、スポーツの場だけではない。何事に対してもノリが良く、徹底的に楽しむ血がアメリカの人々に流れているからこそ、このような祝いの場で躊躇なく正直に、体全体で喜びを表せるのだろう。
賃金格差問題をアピールする場に
この日の祝賀イベントは、ただのお祭り騒ぎだけではなかった。今年3月、アメリカ女子代表(USWNT)の28選手は米サッカー連盟を、イコールペイ(男女賃金格差の是正)のために提訴した。女子代表選手は男子代表選手(USMNT)よりも多く勝ち、多額の収益を生み出しているのに、十分な賃金を得られていないのは不当な差別だというのが、USWNT側の主張だ。
『ワシントンポスト』紙などが報じた訴訟内容は、一流の女子選手が稼ぐ年収は一流の男子選手のわずか38パーセント足らずで、格差は16万4,320ドル(約1,789万円)にも上るという。2017年にはその差が少し縮まったものの、未だに大きな賃金格差がある。