最新記事

サッカー

「今こそ賃金格差をなくそう」、ラピノー選手の優勝スピーチが聴衆を巻き込んだ 

2019年7月16日(火)17時30分
安部かすみ

表彰セレモニーでのミーガン・ラピノー選手 Vincent Carchietta-USA TODAY Sports-REUTERS

<FIFA女子ワールドカップで優勝したアメリカチームの祝賀パレードで、ラピノー選手が行ったスピーチが話題だ>

2019年FIFA女子ワールドカップで、アメリカがオランダを2対0で破り、2大会連続4度目の優勝を果たした。

abe0716a.jpg

1,600万人が画面にかじりついたといわれる7月7日の決勝戦。優勝が決まりニューヨークでも歓喜に包まれた。(c) Kasumi Abe

選手らは翌日ニューアーク空港(ニュージャージー州)経由で帰国の途に就き、10日午前9時30分からニューヨーク市庁舎前で表彰セレモニーと優勝パレードを行った。

パレードを見に来た群衆の中には、「こんな機会はめったにないから学校を休ませ、この子の記憶に一生残るようなものを見せたい」と、子づれで参加している人も多数見受けられた。

選手はこの日、スーツ着用の堅苦しい記者会見...ではなく、「世界チャンピオン」と書かれたラフなTシャツを着て、表彰セレモニーの壇上に現れた。感極まって踊りだしたり、クイーンの『We Are The Champions』を大合唱したり、シャンパン片手にフロート(パレードの台車)に乗り込んだり...。


これらの様子を眺めながら、筆者は少し前にインタビューしたニューヨークで働く寿司職人が「アメリカというところはエンターテインメントの国だと(寿司カウンター越しでさえ)ひしひしと感じる」とコメントしたのを改めて思い出したのだった。

エンタメとは、なにも派手でエキサイティングなコンサートやブロードウェイミュージカル、スポーツの場だけではない。何事に対してもノリが良く、徹底的に楽しむ血がアメリカの人々に流れているからこそ、このような祝いの場で躊躇なく正直に、体全体で喜びを表せるのだろう。

賃金格差問題をアピールする場に

この日の祝賀イベントは、ただのお祭り騒ぎだけではなかった。今年3月、アメリカ女子代表(USWNT)の28選手は米サッカー連盟を、イコールペイ(男女賃金格差の是正)のために提訴した。女子代表選手は男子代表選手(USMNT)よりも多く勝ち、多額の収益を生み出しているのに、十分な賃金を得られていないのは不当な差別だというのが、USWNT側の主張だ。

ワシントンポスト』紙などが報じた訴訟内容は、一流の女子選手が稼ぐ年収は一流の男子選手のわずか38パーセント足らずで、格差は16万4,320ドル(約1,789万円)にも上るという。2017年にはその差が少し縮まったものの、未だに大きな賃金格差がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮、仮想通貨開発者狙い米国に企業設立 マルウエ

ワールド

米韓、関税撤廃目指した協定作成で合意=韓国代表団

ビジネス

東京コアCPI、4月は値上げラッシュで+3.4%に

ビジネス

独財政拡大、IMFトップが評価 「欧州全体にプラス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 2
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考えるのはなぜか
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航…
  • 5
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 9
    「地球外生命体の最強証拠」? 惑星K2-18bで発見「生…
  • 10
    謎に包まれた7世紀の古戦場...正確な場所を突き止め…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中