ロシアとOPECが「政略結婚」 値下げ求めるトランプにらみ石油ゲーム
OPECは石油減産の延長を決定。その1週間前にロシアのプーチン大統領が減産方針を明らかにしたことは、OPEC側の怒りを買った。写真はG20サミット期間中に会談したプーチン大統領(右)とサウジアラビアのムハンマド皇太子。6月29日、ロシア政府が大阪市で撮影(2019年 ロイター)
ロシアのプーチン大統領が先週末、石油出国機構(OPEC)の正式決定前に石油の減産延長を明らかにしたことは、加盟国の一部を怒らせた。
かつては石油市場におけるライバルと目されていた非加盟国のロシアが、OPECの政策形成に主導的な役割を果たしていると困惑したためである。
とはいえ、彼らもすぐに現実を受け入れ、石油価格押し上げというOPECの目標達成に向けてロシアは頼れるということを認めた。何しろ今は、トランプ米大統領という別の方面からの圧力も強まっている。
OPECの心変わり
トランプ氏は現在、OPEC、そしてその事実上のリーダーであるサウジアラビアに対してかつてないほどの圧力をかけ、原油増産によって燃料価格を引き下げるよう要求している。2020年の大統領再選をめざすトランプ氏にとって、燃料価格の抑制は重要な国内問題である。
イランのザンギャネ石油相は当初、プーチン大統領が減産延長を事前に発表したことに激しい怒りを表明していた。
同石油相は1日、OPEC加盟国の石油相が会合を開き、実質的に既定の合意を型通り承認するのに先立って、「このようなやり方では、OPECは死んでいくことになる」と断言し、ロシアとサウジに牛耳られていることを嘆いた。
ところがその日の夜になると、ザンギャネ石油相は「会合はイランにとって好ましいものであり、我々は望んでいた成果を挙げた」として、合意を支持する側に回った。
こうしてOPECとロシアは思いもよらぬ提携関係に入り、米国による増産と世界経済の成長鈍化に抵抗して、「OPECプラス」同盟を結成してグローバルな石油供給を抑制することになった。
これは、OPECとロシア双方がそれぞれの財政を強化するために原油価格の上昇を望んでいることによる、いわば政略結婚的な関係だが、トランプ政権からの要求に対してOPECの立場を強化することにもなりうる。
サウジアラビアのファリハエネルギー相は、今やプーチン氏がOPECのボスになったのかという質問に対し、「ロシアが支配しているとは考えていない」と述べた。「ロシアの影響力は歓迎されていると私には思える」
イランのカゼンプールOPEC理事も、自身の上司であるザンギャネ石油相の融和的な論調に呼応するように、こうした見解に同意する。
「ロシアは大きな産油国だ。ロシアがOPEC加盟国と何か合意したと発表するならば、それは歓迎すべきことだ」と、カゼンプール氏は言う。「我々は協力関係にある」
イランを抜いてサウジアラビアに次ぐOPEC第2の産油国となり、欧州・アジア市場でもイランの市場シェアを奪っているイラクも、やはりロシアの役割増大に好意的である。
数十年にわたって敵意と不信に彩られてきたロシアとの関係を鑑みれば、OPEC加盟国が一致してロシアを歓迎するのは大きな方針転換である。
2001年には、ロシアはOPECと歩調を合わせて減産に合意したが、その公約を守ることなく、逆に増産した。これは両者の関係をひどく損なった。その後、協力を試みては失敗を重ねてきたが、ようやく最近になって努力が実った。
サウジアラビア元石油相のナイミ氏は、著書「Out of Desert(砂漠より)」の中で、2014年のロシア当局者との会合は数分で終ってしまったと書いている。ロシアに減産の考えがないことが分り、彼は資料をまとめ、「これで会合は終わりということだな」と言ったという。