ロシアとOPECが「政略結婚」 値下げ求めるトランプにらみ石油ゲーム
石油市場に力の変化
プーチン氏は6月29日、大阪市で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合のかたわら、サウジのムハンマド皇太子と会って「OPECプラス」による減産延長に合意したことを明らかにした。
ブラック・ゴールド・インベスターズのゲイリー・ロス最高経営責任者(CEO)は、サウジがプーチン大統領の発表を止めなかったことが仮に「配慮に欠けていた」としても、そこには石油市場における力関係の変化が現れていると話す。
OPECの動向をずっと追い続けてきたロス氏は、「トランプ大統領にとって原油価格は安い方がありがたい。だがプーチンは価格上昇を望んでいる」と言う。「プーチン大統領はOPECにとって非常に重要な存在だ。そしてロシアにとっても、予算の半分をエネルギー関連収入に頼っているだけに、依然としてOPECとの協力が最善である」
ロシアが財政収支を均衡させるには1バレル45─50ドルの水準が必要であり、懐事情はクリミア半島併合後、米国が科した制裁によって厳しくなっている。サウジは1バレル80ドルという、さらに高い価格を必要としている。ベンチマークとなるこの地域のブレント価格は現在、1バレル65ドルだ。
トランプ氏はサウジに対し、イランとの対立において米国の軍事支援を望むなら石油を増産するよう要求しているが、サウジがこの要求に抵抗する上でロシアとの協力関係はある程度支えになる。
同時に、プーチン大統領にとっても歳入の増加以上の利益をもたらしている。米国の同盟国であるサウジとの関係が良好であれば、中東でロシアの影響力が高まり、シリア内戦におけるプーチン政権にプラスになる。OPECの会合が開かれるオーストリアのウィーンに派遣されているロシア代表団の関係者は、米国政府との関係改善にさえ役立つかもしれないと話す。
こうした複雑な役割を象徴するかのように、ロシアのノバク・エネルギー相は、サウジ、イラン、トルコ、カタールなどとの協力関係を議論する複数の政府委員会トップを務めている。
特にイランの態度の変化は、同国が直面する政治面、経済面でのプレッシャーをよく表している。
トランプ氏が再び強める制裁の影響で、イランの原油生産量は減少している。OPECにおける影響力が低下する一方で、サウジ、そしてOPEC非加盟国であるロシアの存在が増大している。
2018年4月に1日250万バレルだったイランの原油輸出量は、今年6月には30万バレルまで急減した。
一方で、イラン自身もロシアからの支援を当てにしている。石油輸出を締め上げ、イラン経済に打撃を与えている制裁に対抗するための支援をイランに申し出ている数少ない国の1つだからだ。
ロシアのエネルギー業界関係者は、イラン経済をテコ入れするための取組みがいくつか進められているが、協議の進ちょくは遅く、難しいと話す。計画の詳細は明らかにしなかった。
(翻訳:エァクレーレン)
[ウィーン ロイター]
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