トランプの独裁者贔屓は要警戒レベル
Trump’s Dictator Envy Isn’t Funny Anymore
トランプはひどく独裁者を羨ましがっている。独裁者のような絶対的な権力、マスメディアを支配する力、イエスマンだらけの側近を欲しがっている(閣議では、既にそれらしい人物が集まっている)。
しかし、かつてはトランプだけが楽しんでいた政治ショーが、今は現実の災難を招こうとしている。これからどんなことになるのか、不安に思わずはいられない。
トランプは独裁者のように政策を実行し、アメリカの力を行使している。だが、やることが支離滅裂なため政策はスムーズに実行できず、アメリカはかえって力を削がれている。
自分のことしか頭にない
アジア政策を主に扱うサミットに参加するのに、トランプはアジアの専門家を連れてこなかった。その理由のひとつとして、トランプ政権のハイレベルの役職にそうした専門家がいないという事実はある。だが専門家が何人かいたとしても、トランプは彼らに相談しなかっただろう(ロシア、中東、その他の地域が専門のスタッフは一応、ある程度いるが、トランプが彼らに相談することはめったにない)。
トランプにとってはすべてが「自分」だ。彼の政権運営の本当のスローガンは「アメリカを再び偉大な国に」ではないし、それは最も重要なことでもない。
独裁主義に傾いていく自分の動きがアメリカの力の復活につながるとトランプは考えているかもしれないが、それは反対の効果をもたらす。世界中の人々が笑っているが、なかには不安を感じている人もいる。
イバンカがリーダーの一員のように振る舞おうとする恥ずかしいビデオを公開したのは、マクロンの広報室だ。トランプが自分に向かってウインクをしたり、笑顔を見せたりするたびに、プーチンは神に感謝しているはずだ。中華人民共和国の習近平(シー・チンピン)国家主席はゆっくりと辛抱強く、貿易交渉を中国に有利な方向に動かしている。そして、アメリカとの安全保障協定を懐疑的に見始めたアメリカの同盟国をつついて、中国のほうへ誘っている。
トランプのツイートや怒りにまかせた暴言で、彼のがさつで愚かな本性が明らかになる。それを笑うのもいいし、ため息をつくのもいい。
ただ、トランプが何をしているのか、どこへ漂っていくのか、そして彼はアメリカにどんな影響を与えるのか、結果として世界の中でアメリカがどういう地位を占めることになるのかといったことは、もっとよく監視していなければならない。なにしろ、それこそが災いの元なのだから。
(翻訳:村井裕美、栗原紀子)
©2019 The Slate Group
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