最新記事

トランプ

トランプの独裁者贔屓は要警戒レベル

Trump’s Dictator Envy Isn’t Funny Anymore

2019年7月1日(月)19時30分
フレッド・カプラン

トランプはひどく独裁者を羨ましがっている。独裁者のような絶対的な権力、マスメディアを支配する力、イエスマンだらけの側近を欲しがっている(閣議では、既にそれらしい人物が集まっている)。

しかし、かつてはトランプだけが楽しんでいた政治ショーが、今は現実の災難を招こうとしている。これからどんなことになるのか、不安に思わずはいられない。

トランプは独裁者のように政策を実行し、アメリカの力を行使している。だが、やることが支離滅裂なため政策はスムーズに実行できず、アメリカはかえって力を削がれている。

自分のことしか頭にない

アジア政策を主に扱うサミットに参加するのに、トランプはアジアの専門家を連れてこなかった。その理由のひとつとして、トランプ政権のハイレベルの役職にそうした専門家がいないという事実はある。だが専門家が何人かいたとしても、トランプは彼らに相談しなかっただろう(ロシア、中東、その他の地域が専門のスタッフは一応、ある程度いるが、トランプが彼らに相談することはめったにない)。

トランプにとってはすべてが「自分」だ。彼の政権運営の本当のスローガンは「アメリカを再び偉大な国に」ではないし、それは最も重要なことでもない。

独裁主義に傾いていく自分の動きがアメリカの力の復活につながるとトランプは考えているかもしれないが、それは反対の効果をもたらす。世界中の人々が笑っているが、なかには不安を感じている人もいる。

イバンカがリーダーの一員のように振る舞おうとする恥ずかしいビデオを公開したのは、マクロンの広報室だ。トランプが自分に向かってウインクをしたり、笑顔を見せたりするたびに、プーチンは神に感謝しているはずだ。中華人民共和国の習近平(シー・チンピン)国家主席はゆっくりと辛抱強く、貿易交渉を中国に有利な方向に動かしている。そして、アメリカとの安全保障協定を懐疑的に見始めたアメリカの同盟国をつついて、中国のほうへ誘っている。

トランプのツイートや怒りにまかせた暴言で、彼のがさつで愚かな本性が明らかになる。それを笑うのもいいし、ため息をつくのもいい。

ただ、トランプが何をしているのか、どこへ漂っていくのか、そして彼はアメリカにどんな影響を与えるのか、結果として世界の中でアメリカがどういう地位を占めることになるのかといったことは、もっとよく監視していなければならない。なにしろ、それこそが災いの元なのだから。

(翻訳:村井裕美、栗原紀子)

©2019 The Slate Group

cover0709.jpg
※7月9日号(7月2日発売)は「CIAに学ぶビジネス交渉術」特集。CIA工作員の武器である人心掌握術を活用して仕事を成功させる7つの秘訣とは? 他に、国別ビジネス攻略ガイド、ビジネス交渉に使える英語表現事例集も。


© 2019, Slate

20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

尹大統領の逮捕状発付、韓国地裁 本格捜査へ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 8
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中