質問・批判をかわす「安倍話法」には4パターンある、その研究
また上西教授は、これに続くやり取りも紹介している。
Q 「では、何か食べたんですか?」
A 「お尋ねの趣旨が必ずしもわかりませんが、一般論で申し上げますと、朝食を摂る、というのは健康のために大切であります」
Q 「いや、一般論を伺っているんじゃないんです。あなたが昨日、朝ごはんを食べたかどうかが、問題なんですよ」
A 「ですから......」(上西充子教授のツイッター)
(129〜130ページより)
確かに安倍首相の国会答弁には、こうした話法を使ったものが多い。例えばその一例として、総裁選中の2018年9月17日、安倍首相がTBS『NEWS23』に出演したときのことが紹介されている。
キャスターの星浩氏から、加計孝太郎理事長とゴルフや会食を頻繁に重ねたことの是非を問われて、
「ゴルフに偏見をもっておられると思います。今、オリンピックの種目になってますから。ゴルフがダメでですね、テニスはいいのか、将棋はいいのか、ということなんだろうと思いますよ」と持論を展開。(130〜131ページより)
「学生時代からの友人であっても利害関係者との飲食やゴルフなどの交流を持つこと自体を、慎むべきではないか」と追及されているにもかかわらず、「ゴルフはなぜ、いけないんだ」と、開き直って、質問の論点を曖昧にしているということだ。著者はそれを「見ごとなすり替え」と表現しているが、むしろ滑稽に感じてしまうのは私だけだろうか?
さらに安倍首相は、「はっきりと申し上げたいのは、利害関係者から一円の献金も受けていないわけですから。加計さんからもそうですし、獣医師会からも一円も献金を受けていません」と続けている。
「"一円も"献金を受けていない」と強く否定することで、視聴者に「もしや、質問者は間違った情報を首相にぶつけているのではないか?」という「印象」を植え付けつつ、安倍首相は「相手が利害関係者であっても、以前からの友人だから問題ない」という独自の論理を展開(披露)したのだと、著者は解き明かす。
だが、それ以前に「一円」という表現も実に大人げない。そして、それが「安倍話法を考える②」に紐づいていく。
根拠なき事実を強調しようとする傾向
「安倍話法を考える②」は、「『一』『1』で強調して否定する」こと。この話法については、2つの事例が引き合いに出されている。
二〇〇七年参議院選挙の政見放送で、安倍首相は消えた年金問題について、「最後のお一人にいたるまで、記録をチェックして真面目に保険料を払ってこられた方々にしっかりと、年金を正しくお支払いしていくということです」と公約を掲げた。(132ページより)
また、国民民主党(当時)の今井雅人議員から、「森友と加計、その他いろいろの問題をお伺いしたいと思いますが、(中略)ここまで来て、総理は、うみは出し切るとおっしゃっておられましたが、もううみは出しきられたというふうに思われますか」と問われた安倍首相は、「加計問題について言えば、まさにプロセスにおいてはこれは一点の曇りもなかったのは間違いないだろう、こう思うところでございますし、私から指示や依頼を受けた人は、これは前川次官も含めて、誰もいないということは明らかになっているというふうに考えるところでございます」(二〇一八年五月二八日 衆議院予算委員会)と返答。
(132〜133ページより)