25年ぶりの野党勝利、イスタンブール新市長が圧勝した理由
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市内ベイリドゥズの広場でイマモールの勝利を祝う支持者たち KEMAL ASLAN-REUTERS
<反エルドアンというより、AKP市政の下での経済混乱――。頭脳流出が止まらないトルコ最大の都市をイマモールは救えるのか>
去る6月23日、トルコ最大の都市イスタンブールで行われた市長選の「再投票」で、野党・共和人民党(CHP)候補のエクレム・イマモールが再び勝利を手にした。しかも今回は文句なしの圧勝だ。
その1週間前、与党・公正発展党(AKP)候補のビナリ・ユルドゥルム元首相はテレビ討 論で、イスタンブールの人口は減っている、AKPのおかげでアナトリア半島の生活インフラが整備され、故郷に戻る人が増えたからだ──と主張した。
だが事実は異なる。昨年、約60万の市民が転出したのは事実だが、転入者も同じくらいで、自然増と合わせれば総人口は微増だった。転出者の増加も、地方のインフラ改善の成果ではなく、AKP市政の下でイスタンブールの住環境が悪化し、経済が混乱したせいだ。
「転出増の主な理由は国全体の深刻な景気後退だろう」と言うのは米デューク大学のティムール・クラーン教授。「職を失った人が故郷に戻っている。生まれ育った土地なら、何かと助けてくれる人もいるからだ」
国政に転出する前のレジェップ・タイップ・エルドアン(現大統領)以来、イスタンブールの市長職は四半世紀にわたりAKP系の人物が独占してきた。しかしAKPの市政には無駄な支出が多く、保守的な宗教団体への補助金も多かった。一方で通貨リラの下落は都市住民を直撃し、輸入品を中心とする物価の高騰で生活必需品にも手が出ない市民が増えていた。
加えて、2016 年のクーデター未遂事件以降には治安対策の強化で大勢の知識人や公務員などが職を追われ、やむなく市外や国外に逃れた。こうした頭脳流出の影響は、これから出てくるのかもしれない。
コンクリート化にそっぽ
今回の再投票で、イマモールは全39選挙区のうち、伝統的にAKPの地盤とされる選挙区も含め、28区で勝利した。与党候補との票差は1回目の1万3000票から約80万票へと大幅に開いた。イスタンブールには「新しい血」が必要だという市民の思いが反映された結果だ。
1950年代以来、イスタンブールにはアナトリア半島の全域から夢多き人々が集まってき た。当時100万人程度だった人口は20世紀末に1000万人に達し、昨年段階で1500万人を超えた。新しい住民たちが切り開いた居住地の一部は、今や立派な住宅街に発展した。一方で、AKP市政下の再開発で取り壊され、大企業や富裕層向けの高層ビルに生まれ変わった地区もある。