最新記事

人体

人為的に変形された1万2000年前の頭蓋骨が中国で発掘される

2019年7月8日(月)18時00分
松岡由希子

エイリアン? 人為的に変形された人骨が発掘された...... American Journal of Physical Anthropology

<中国で発掘された人為的に変形された頭蓋骨を持つ人骨は、1万2000年前のものであることがわかった......>

中国東北部の吉林省にある後套木嘎遺跡で人骨25体が発掘され、そのうち11体で人為的に変形させた頭蓋骨が見つかった。その多くは、前頭骨と後頭骨が平行になるように変形していたという。

人為的にヒトの頭蓋を変形させる「頭蓋変形」は、完全に接合されていない新生児の頭蓋骨に人為的に圧力を加えて変形させ、変形状態で接合してそのまま固定するというものだ。イラクのシャニダール洞窟で発掘された4万5000年前のネアンデルタール人でも頭蓋変形が 確認されているように、かつては世界各地で頭蓋変形の風習があったとみられているが、その起源や歴史、目的、意義などについては、まだ明らかになっていない。

matuoka0708b.jpg

ペルー 原始ナスカ文化の人工頭蓋変形 Didier Descouens - wikipedia

頭蓋骨が変形した11体の人骨

吉林大学と米テキサスA&M大学の共同研究チームは、吉林省の後套木嘎遺跡で2011年から2015年にかけて発掘された新石器時代の人骨25体を分析し、2019年6月25日、アメリカ自然人類学会(AAPA)の機関誌「 アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジカル・アンソロポロジー 」でその研究成果を発表した。

研究チームは、CTスキャンにより、11の頭蓋骨で頭蓋変形の形跡を見つけた。これらのうち5個は成人のもの、6個が子どものものとみられ、年齢は3歳から40歳と推定されている。1万2000年前の堆積物で発掘された成人男性の頭蓋骨が最古のものである一方、6500年前の堆積物や5000年前の堆積物からも同様の頭蓋骨が見つかっていることから、少なくとも約7000年にわたって、この地域で頭蓋変形の風習が受け継がれていたと考えられている。

また、同じ墓に埋葬されていた個体でも、頭蓋変形の形跡があるものとそうでないものがあった。それゆえ、頭蓋変形は、家系や社会的・経済的地位などを示すなどの目的で、特定の人々のみを対象に、選択的かつ意図的に行われたものではないかと推測されている。

頭蓋変形の謎を解くカギが潜む可能性

アジア大陸の北東部は、中国や朝鮮半島、日本列島、シベリア東部などに向けて人々が移動した中継地であるため、後套木嘎遺跡から発掘された人骨や出土品には、頭蓋変形の起源や意義などの謎を解くカギが潜んでいる可能性がある。研究チームでは、今後、後套木嘎遺跡と他の新石器時代の遺跡との比較研究を行い、頭蓋変形についてさらなる解明をすすめていく方針だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザでの戦争犯罪

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、予

ワールド

ロシアがICBM発射、ウクライナ発表 初の実戦使用

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部の民家空爆 犠牲者多数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 2
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッカーファンに...フセイン皇太子がインスタで披露
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 5
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 6
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    習近平を側近がカメラから守った瞬間──英スターマー…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中