PTSD治療の第一歩は潜在記憶の直視から
Unspeakable Memories
この恐怖構造を解体していけるかどうかが治療の鍵を握る。PTSDを克服するには熟練した専門家の指導の下で、患者は何度もつらい体験を語る必要がある。言葉にできない苦しみを、いつでも言葉にできる体験に変えなければならないのだ。
決して楽な作業ではない。心の傷を思い起こさせるものは何であれ避けたいのが人情だ。傷から目を背けたい衝動は強く、多くの患者が幻覚剤や医療用マリフアナにすがる。だが薬物は根本的解決にならず、恐怖構造を壊してもくれない。
記憶の秩序を取り戻さなければ――。そう意識して初めて、患者は健やかな新生活への一歩を踏み出せる。
(本稿は筆者の新著『言葉にできない記憶――PTSD研究の最前線から見たトラウマと癒やしの物語』からの抜粋)
<本誌2019年6月25日号掲載>
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