最新記事

米中貿易戦争

米中通商協議再開で合意 トランプ、ファーウェイ制裁一部緩和

2019年6月29日(土)20時44分

トランプ米大統領は中国の習近平国家主席と会談、「われわれは軌道に戻った」とし、中国との交渉を継続するとの認識を示した。写真は会談前に握手をする両首脳。大阪市内で撮影(2019年 ロイター/Kevin Lamarque)

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は29日の会談で、5月以降停止していた通商協議を再開することで合意した。米国は第4弾の対中追加関税の発動をとりあえず控える。1年近く続く米中貿易戦争ですでに多大な影響を受けている世界経済にとっては朗報となる。

両首脳は20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の合間に80分間にわたり会談。トランプ大統領は、「われわれは軌道に戻った」と述べた。

すでに中国からの輸入品2500億ドル(約27兆円)分に25%の関税を課している米国は、これまで除外してきたスマートフォンやパソコンなども含めた3250億ドル相当を新たに課税対象にする手続きを進めてきた。

トランプ大統領は、すでに発動した制裁関税は維持するものの、事実上、ほぼすべての中国製品に追加関税をかける第4弾の発動は差し控える方針を示した。

サミット閉幕後の会見でトランプ氏は「(今のところ)米国は関税を差し控える一方、中国側は米国産農産物の購入を拡大する」と述べた。ただ、農産物購入の拡大について、詳細は明らかにしなかった。

また「ディールが成立すれば非常に歴史的な出来事になる」と述べたが、「複雑なディール」と称する貿易合意をいつ達成できるか具体的な期限は示さず、合意を急いでいないと述べた。

ファーウェイ問題に光明

米国は、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)について、安全保障上の脅威があるとみなし、米政府の許可なく米国企業から部品や技術を購入するのを禁止する「エンティティー・リスト(EL)」に加えた。

トランプ大統領は、ファーウェイをELから除外するか、商務省が数日中に協議する予定だと述べた。

中国はこれを歓迎。中国外務省のG20担当特使の王小龍氏は「米国がその通り実行するなら、もちろんわれわれは歓迎する」と述べた。

米半導体業界団体も「われわれは、米中協議が再開し、新たな関税発動が棚上げとなったことは心強い。トランプ大統領のファーウェイに関する発言について詳細な情報を得るのを楽しみにしている」とする声明を発表した。

安堵と疑念

中国外務省の声明によると、習国家主席は会談で、中国企業を公平に扱うよう要請。国家主権や尊厳の問題として中国は中核的利益を守らなければならないと述べた。

「中国は米国との交渉継続に真摯な姿勢だ。しかし交渉は対等で互いに敬意を示すべきだ」と習氏はトランプ氏に語ったという。

週明けの金融市場は、米中の協議再開を好感するとみられる。

米中ビジネス協議会(USCBC)の中国担当バイスプレジデント、ジェイコブ・パーカー氏は「協議再開は財界にとって朗報で、徐々に悪化する関係に関し、幾分視界が開ける」と述べた。

その上で米中は今後、コンセンサス作りという厳しい課題に取り組むことになるが、米中は、双方の首脳のコミットメントにより事態打開に向けた持続的な道筋を歩むとの見方を示した。

だが、米中の「休戦」が長くは続かないとの見方もある。

キャピタル・エコノミクスは「今週末に休戦が実現したとしても、その後の協議で再び決裂して対立が激化する可能性は依然ある」と指摘した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独新財務相、財政規律改革は「緩やかで的絞ったものに

ワールド

米共和党の州知事、州投資機関に中国資産の早期売却命

ビジネス

米、ロシアのガスプロムバンクに新たな制裁 サハリン

ビジネス

ECB総裁、欧州経済統合「緊急性高まる」 早期行動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 10
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 9
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 10
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中