最新記事

フィンテック

キャッシュレス化が進むインドネシア 配車サービスGOJEKが社会を変える

2019年6月24日(月)19時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

物流とサービスをマルチ展開して急成長するGOJEK。写真はジャカルタ市内で女性客を乗せて走るGOJEK。Garry Lotulung - REUTERS

<日本でもにわかに盛り上がってきたスマホ決済サービス。本場中国を追いかけて、急成長をしているのが東南アジア各国だ。銀行口座やクレジットカードを通り越してフィンテックが発達しつつあるインドネシアの実情とは?>

インドネシアのオンライン配車大手の「GOJEK(ゴジェック)」社のマーチャント部門長リュウ・カワノ氏(日系2世)は6月19日、ジャカルタ市内の日本貿易振興会(JETRO)ジャカルタ事務所で講演し、「GOJEKは常にパートナーを探しており、日本企業とも幅広い分野での協業を進めたい」と日本企業との関係強化に向けた取り組み姿勢を表明した。インドネシアでは急速に電子マネーなどのフィンテックが進んでおり、人びとの生活に変化をもたらそうとしている。

東南アジアの大国インドネシアは、シンガポールに次いでオンラインシステムが発達しており、ゴジェックはインドネシアのフィンテックを代表するベンチャー企業で、シンガポールの銀行DBSグループとも業務提携するなど成長著しい企業だ。

その最大の強みは世界第4位の人口2億5000万人という巨大マーケットである。

インドネシアには伝統的な交通シェアリングサービスとしてバイクタクシーの「オジェック(OJEK)」が存在し、市民の足であった。しかし、オジェックは運転手が待機している場所まで赴き、なおかつ利用料金を運転手と直接交渉する必要があった。また着用が義務付けられているヘルメットを使わないケースも多かった。

ところがGOJEKは、待機場所で終日利用客を待つバイクタクシーの効率的で利用者の便を考えたサービスの提供を開始。マレーシア発祥で同様のサービスをインドネシアでも展開する「Grab」と激しい競争を展開している。

オジェックからの参加者や事務職や警備員からの転職者、失業者らによる運転手登録が相次ぎGOJEKのライダーは急増した。登録されるとユニフォームである緑と黒のジャンパーと同乗者用も含めたヘルメット(共にGOJEKのロゴが描かれている)を与えられ街に飛び出していく。

失業者にも雇用機会を提供していることで「GOJEKの取り組みはインドネシアの社会問題の解決の一助ともなっている」(GOJEKカワノ氏)と単なる利益追求だけでなく社会貢献の役割も果たしていると強調する。

スマートフォンで専用アプリを用意すれば、いつでもどこでも客の注文を受け取れる便利さが魅力で、利用者にしてもバイクや自動車を利用する場合、料金は依頼発注時に表示されるので値段の交渉は不要。バイク同乗の際はヘルメットだけでなくヘアーカバーやマスクも希望すれば貸出と便利なことこのうえない。

newsweek_20190624_184506.JPG

GOJEK社のマーチャント部門長リュウ・カワノ氏(撮影=筆者)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の

ビジネス

豊田織機の非公開化報道、トヨタ「一部出資含め様々な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中