最新記事

日米関係

攻めのトランプに守勢の安倍 日米首脳会談、通商問題で温度差

2019年5月27日(月)21時24分

5月27日、令和時代の初の国賓として来日しているトランプ米大統領は、安倍晋三首相と首脳会談を行った。都内で会談に臨む両首脳。代表撮影(2019年 ロイター)

令和時代の初の国賓として来日しているトランプ米大統領は27日、安倍晋三首相と首脳会談を行った。両首脳は、北朝鮮問題を含む防衛分野での認識が一致していることを強調した。

他方、通商問題ではトランプ大統領が8月中に何らかの合意を発表すると言明。環太平洋連携協定(TPP)には縛られないとも強調し、日本側に強い圧力をかけたことをうかがわせた。安倍首相は交渉加速で一致したと述べるにとどまり、貿易不均衡の是正をめぐり、日米間に大きな「温度差」が存在していることを鮮明にした。

日米首脳会談は冒頭、首脳同士の会談が予定時間を超えて行われ、続いて少人数の会合、両国の主要閣僚なども参加したワーキングランチが行われた。

首脳同士の会談の冒頭、トランプ大統領は首脳会談の主要なテーマが、対北朝鮮問題、防衛分野、通商問題の3つであることを指摘。中でも通商問題では「われわれは貿易不均衡問題に取り組んでいる」、「貿易不均衡は、じきに解決するだろう」と述べた。さらに「われわれは通商に関し、おそらく8月に何らかの発表をする見通し」と踏み込んだ。通商問題では「自動車について議論する」とも語った。

会談終了後、両首脳は共同会見に臨み、そこでもトランプ大統領は日米貿易不均衡の是正に強い姿勢で対応するスタンスを強調した。

今後の日米通商問題では「公正と相互主義に基づく、日本との経済関係改善に努力する」と述べ、「あらゆる貿易障壁を取り除くことが目標」と言明。「信じられないくらい」に大きな不均衡が存在するとし、米国からの対日輸出が公正に取り扱われることを望むと強調した。

トランプ大統領は、会見では合意の時期について冒頭発言のようには8月とまでは言及しなかったが「貿易について、近く発表することを望む」と述べ、早期合意に強い意思を示した。

さらに農産物貿易で、日本がTPP並みの関税引き下げが最大限の譲歩であるとの立場を繰り返しているのに対し、トランプ大統領は「私はTPPに縛られない」と発言し、日本がTPPで決められた水準を超えて関税を引き下げることに強い期待感を表明した。

一方、安倍首相は会見で、昨年9月の共同声明に沿って、茂木敏充経済再生担当相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表による協議を加速させることで一致したと述べたが、合意時期のメドなどへの質問に対する具体的な言及はなかった。

「米経済に最も貢献しているのは日本企業。日米の経済関係は大きく発展しつつある」と述べ、「日米双方にとって、ウィンウィンとなる合意としたい」と語り、日本企業の貢献に理解を求めた。

通商問題を巡っては、安倍首相が従来の見解を繰り返し、具体性のある発言を回避した印象。「攻め」の米国/「守り」の日本という構図もうかがえ、両国の主張に大きな溝があることを示した。

だが、日米同盟関係の基幹部分である「防衛分野」や、対北朝鮮問題などでは、両首脳は息の合ったところをみせた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中