インドネシア、現職ジョコ大統領再選 対立候補は「不正選挙」訴え緊張高まる
大衆デモにテロ警戒で首都は厳戒態勢
こうした選挙結果に対して不満をもつ人びとの存在によって、インドネシア各地では緊張が高まりつつある。
当初選管の正式結果が発表される予定だった5月22日には選管のあるジャカルタ中心部メンテン地区や選挙監視庁(Bawaslu)のある目抜き通りタムリン通り周辺で「選挙に不正があり、選挙結果は無効」と訴える大規模な大衆デモが計画されていた。
さらに国家警察対テロ特殊部隊「デンスス88」が5月に入ってからジャワ島を中心に「5月22日にジャカルタ中心部で爆弾テロ」を計画していたとの容疑でインドネシアのテロ組織「ジェマ・アンシャルット・ダウラ(JAD)」のメンバーを複数逮捕するとともに爆弾、起爆装置などを押収。それでも「依然としてテロの危険がある」と市民に注意を呼びかける治安当局は、20日から市内要所に完全武装の警察官、兵士を配置して厳重警戒態勢を取っている。
21日には大型ショッピングセンターやモール、キリスト教会などの宗教施設、さらに警察施設や政府要人の私邸などにも完全武装の兵士、警察官などが配置されるなど緊張感が高まっており、在ジャカルタ米大使館や日本大使館はそれぞれ在住あるいは旅行中の自国民に対し、デモなどの情報を伝えるとともに十分な注意を呼びかけている。
またジャカルタ市内では22日を休校にする学校が出たり、地方からジャカルタに向かう幹線道路の検問が厳しくなるなど、市民生活への影響も出ている。21日までにはプラボウォ支持者が乗ってジャカルタに向かっていたバスの中から火炎瓶が発見され、押収される事件も起きている。
戦術不透明のプラボウォ氏に緊張高まる
プラボウォ氏は市民に冷静な対応を呼びかけ、一時は「今回は憲法裁判所に不服を申し立てても所詮結果(前回の却下と)は同じなので行わない」と発言していた。
そうした法に基づく手続きをせずに今回の選挙結果を「不正があったために受けれ入れない」ということ批判することは理屈に反しており、「不服があるなら手続きに従うべき」という反発も高まっている。
20日には大衆抗議運動を呼びかけて「社会不安を扇動した」との容疑で警察に身柄を拘束された支持者幹部と面会するためプラボウォ氏が警察本部を訪問した。ところが一部報道でプラボウォ氏自身が扇動容疑で事情聴取の対象になっているとの情報が流れ、「事情聴取から身柄拘束か?」との不穏な未確認情報で一時緊迫する場面もあった。
今後は支持者やイスラム教急進派などのプラボウォ氏に賛同する勢力が自発的に抗議運動やデモを実施し、世論を高める戦術しかプラボウォ氏側に残された手段はないといえる。
そうした騒然とした雰囲気の中で突発的な衝突や、機に乗じたイスラムテロ組織による爆弾テロの危険も払拭されていない。
インドネシアは現在5月6日から約1カ月続くイスラム教の「ラマダン(断食)」の真っ最中。ジャカルタや地方大都市では市民は緊迫したラマダンの最中の22日を迎えようとしている。