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海洋生物海中の酸素濃度の低下で海洋生物が失明するおそれがあることがわかった
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<海洋生物の一部で、海水の酸素濃度の低下により失明するおそれがあることがわかった>
海洋生物の多くは、食物を見つけたり、天敵から身を隠したり、逃げたりするうえで視覚が重要な役割を果たしている。視覚の維持や視覚情報処理には多くのエネルギーを要するため、海中の酸素濃度の変動には敏感だ。このほど、海洋生物の一部で、海水の酸素濃度の低下により失明するおそれがあることがわかった。
網膜の光感受性が水中の酸素濃度に極めて敏感
米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)スクリップス海洋研究所(SIO)の博士課程に在籍するリリアン・マコーミック氏らの研究チームは、カリフォルニア州沿岸に生息するヤリイカ、カリフォルニア・ツースポットタコ、カニ(短尾下目)、コシオレガニの幼虫を酸素濃度の低下した環境にさらし、これら4種類の海洋無脊椎動物の網膜の光感受性が水中の酸素濃度に極めて敏感であることを世界で初めて示した。
この研究成果は、2019年4月24日に学術雑誌「ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・バイオロジー」で公開されている。
研究チームは、スクリップス海洋研究所近くで採集した幼虫の網膜に電極をつけ、海面と同等の高い状態から酸素濃度を低下させて、視覚の短期反応を網膜電図(ERG)で検査した。
酸素濃度の低下に対する視覚の反応は種によって異なり、ヤリイカとカニは、海面の酸素レベルの20%程度まで酸素濃度を下げるとほぼ失明した一方、カリフォルニア・ツースポットタコは、酸素濃度が一定レベル以下になってから網膜の反応が低下しはじめた。コシオレガニは酸素濃度の低下に対して比較的耐性があり、網膜の反応の低下は60%にとどまった。また、酸素濃度を再び上昇させると検体のほとんどが視覚機能を回復させたことから、短期間での酸素濃度の低下による損傷は一時的なものにとどまるとみられている。
海水の酸素濃度は、この50年間で2%下がっている
海水の酸素濃度は、昼夜のサイクルだけでなく、季節や経年でも変化し、その深さによって変動するが、近年、地球温暖化の影響を受けていることもわかっている。
独ヘルムホルツ海洋研究センター(GEOMAR)が2017年2月に発表した研究論文によると、世界の海中の酸素濃度は、1960年以降の50年間で2%下がっており、地球温暖化に伴う酸素融解度の低下と深海の換気の減少によって、2100年までに7%下がると予測されている。
また、沿岸海域では、富栄養化によって海中の酸素が不足する現象もみられる。米ロードアイランド大学のカレン・ウィシュナー教授は、米メディアサイト「マッシャブル」において、「視覚が低下して、周囲が見えづらくなれば、食物や天敵の存在を気づくことができなくなる。海洋生物にとって酸素濃度の低下は非常に深刻な問題だ」とコメントしている。