オーストラリア総選挙、与党が「奇跡」の勝利 モリソン首相に長期政権の道
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5月19日、オーストラリアで18日に行われた下院総選挙は、与党の保守連合が予想に反して勝利したため、最大勢力の自由党を率いるモリソン首相の党内基盤は強まり、長期安定政権への道が開けた可能性がある。写真は2018年11月、パプアニューギニアのAPECに出席したモリソン首相(2019年 ロイター/Fazry Ismail)
オーストラリアで18日に行われた下院総選挙は、与党の保守連合が予想に反して勝利したため、最大勢力の自由党を率いるモリソン首相の党内基盤は強まり、長期安定政権への道が開けた可能性がある。
今回の選挙はまさにモリソン氏の個人的な勝利だ。他の主要閣僚は地元選挙区に張り付いて危うくなった議席を守るのに必死だった中、ほぼ1人で全国遊説に飛び回っていたからだ。フリンダース大学のヘイドン・マニング教授(政治学)はロイターに「独り舞台だった。後年まで特筆される実績になるだろう。モリソン氏は(劣勢の)見方を覆して勝ちをもたらした」と述べた。
モリソン氏は、昨年8月に自由党の右派が当時のマルコム・ターンブル首相を辞任に追い込んだ後、党内の政治的妥協によって後任に選ばれた人物。それ以降、毎回の世論調査だけでなく18日の出口調査でさえも、保守連合の支持は野党・労働党を下回ってきた。有権者の間に、ターンブル氏追放劇や温暖化対策などの政策実行力の乏しさを巡る不満が渦巻いていたことが理由だった。
しかしいざ暫定選挙結果が判明すると、モリソン氏は自身が「奇跡」と呼ぶほどの大逆転を見せ、過半数を確保するか、そうでなくても無所属議員の支持を得れば政権を維持できるめどが立った。
過去10年間、オーストラリアでは労働党、保守連合ともに短期間で首相が次々に交代する状態が続いていたが、モリソン氏が自らの力で選挙に勝ったことから、同氏を首相の座から下すのは難しくなっている。
勝利の戦略
複数の議員や選挙ストラテジスト、専門家などによると、モリソン氏の勝因には2つの側面がある。
1つは同氏が、クイーンズランド州の近郊など特定の重点地域で勝利し、予想された都市部の議席減の影響を打ち消す作戦を成功させたことだ。もう1つはこの選挙を、同氏と労働党のビル・ショーテン党首のどちらが首相として適切かの争いにして、ショーテン氏が掲げた政策の問題をあぶり出した点が挙げられる。例えば労働党は主により高齢で富裕な国民が恩恵を受けている2種類の税制優遇措置撤廃を提案したものの、若い有権者の支持を得るどころか、労働党は国民の資産を狙っているというモリソン氏の批判にさらされた。
かつて自由党党首を務めたジョン・ヒューソン氏は「モリソン氏の最大の資産はショーテン氏だった。最終的に首相コンテストにしてしまい、ショーテン氏は有権者から好かれたり信頼されなかった」と指摘した。
労働党のストラテジストは、与党側が一体となって近郊部や地方の有権者の支持をうまく取り込んだと分析した。