役人と企業に富、人民には飢えを 中国×ベネズエラ事業「負の遺産」
だが、工事の進捗は遅かった。
掘削機が1台、泥にとらわれて動けなくなったまま放置された。中国人の現場監督はほとんどスペイン語が話せず、現地作業員との意思疎通に苦労したと、プロジェクトに関わったエンジニアは証言する。
同年11月、アンドラの裁判所は、マネーロンダリングの疑いでサラザル氏と前出の部下、他のベネズエラ人6人のBPA口座を凍結した。2013年には、検察当局がサラザル氏らの1年がかりの聴取に乗り出した。2015年3月、アンドラ政府はBPAを管理下に置いた。
最近では1バレル100ドルを超えている原油価格は、同年は半分以下に落ち込んでおり、ベネズエラ経済は大打撃を受けた。
CAMCは、ライスプロジェクトに派遣していた社員ら40人を引き揚げたと、関係者は話す。地元住民は、CAMCが打ち捨てていったスクラップなどを略奪し、仕事を失った従業員は残ったケーブルや電球などを売り払ったと、元マネージャーらは言う。
それでも、マドゥロ氏はこの未完成案件をなんとかしようと試みた。
今年2月、カストロ農業生産土地相は、「ウゴ・チャベス」工場の開所を宣言し、ベネズエラと中国の国旗で飾られた米袋の前でテープカットを行った。CAMC側の出席者はいなかったと、式典に出席した人は話す。
1時間あたり18トンのコメを処理できる機械の代わりに、従業員が手作業で輸入米を袋詰めしている。
「ここで育てられているコメは1グラムもない」と、地元住民のマリアノ・モンティヤさん(47)は言う。低地で何とか穀物を栽培してしのいでいるという。
チャベス氏の当初の計画は「革命的なアイデアに思えた」と、モンティヤさんは言う。「でも今や、われわれは飢えている」
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
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